サステナビリティ / 社会性報告 魅力ある職場づくり労働安全衛生

基本的な考え方

当社グループは「ダイセルグループ レスポンシブル・ケア基本方針」に則り、研究開発・製造・物流など、全ての取り組みにおいてリスクアセスメントを⾏い、安全を確保するための様々な施策を推進します。また、中長期的な目標を定め、CAPD※1サイクルを回して労働安全衛生の継続的な改善に取り組みます。

全ての事業場において、労使一体となり、協力会社※2も含め安全を最優先したモノづくりを大前提とする⽣産現場の基盤整備に取り組みます。

  • ※1計画を起点とした活動では重要な事実を⾒落としてしまうおそれがあると考え、当社では⼀般的なPDCAではなく、CAPDを改善サイクルとしています。
  • ※2協力会社は、主に事業場の各種業務に従事している当社グループ外の企業です。

推進体制

当社グループは、レスポンシブル・ケア(以下、RC)委員会を軸とするRC推進体制の下、各事業場の安全管理責任者を中心に、事業場全体の安全衛生の管理レベル向上を図っています。労働安全衛生マネジメントシステムは、事業場の全社員を対象として、当社国内事業場内のプロセス型の生産形態では「ダイセル式生産革新手法」を、国内外グループ企業の組立加工型の生産形態では同手法をベースとしたトヨタ生産方式を展開しています。また、一部の国内外グループ企業ではISO45001を展開しています。

ダイセル式生産革新手法
「人を中心としたモノづくり」という原点に立ち戻り、ベテランのノウハウや技能を抽出し、モノづくりに携わる全ての従業員が活用できるようシステム化した生産方式です。これにより
①労働安全・保安防災、安定運転の実現
②生産性の大幅な向上
③製造原価の大幅な低減
④より均質できめ細やかな操業や品質の安定化
⑤技能・技術の伝承と人財育成
⑥省エネルギーの実現
など、多岐にわたる効果につながります。
また、各安全管理責任者とアセスメント本部RC室(以下、RC室)で構成される安全環境責任者会議を定期的に開催し、労働安全衛生や保安防災、環境保全をはじめとするRC関連の課題、労働安全衛生法などの規制や法改正内容に関して、情報共有、討議を行っています。主要課題検討会やRC監査では、事業場ごとに策定している「労働安全衛生」をはじめとするRC活動年度計画の進捗状況および課題などについて、確認、討議しています。

さらに各事業場でも、協力会社と安全環境部門が中心となった各種協議会を設定し、安全を確保する様々な施策について確認、討議しています。

レスポンシブル・ケア推進体制(レスポンシブル・ケア監査体制・主要課題検討会)

労働災害防止に向けた取り組み

当社グループでは、重大労働災害ゼロを目標に、CAPDサイクルを回して労働災害の撲滅に向けて、以下のように様々な取り組みを推進しています。

■3S・HH・KYの徹底
3Sは「整理・整頓・清掃」、HHは「ヒヤリハット※1」、KYは「危険予知」の頭文字です。国内全ての事業場では協力会社も含め、現場の基盤整備や過去トラブルの再発防止の基本として取り組んでいます。

■BA(Before/After)の取り組み
3S・HH・KYの取り組みから抽出された改善すべき事案をBefore、改善後の姿をAfterとする職場改善の取り組みです。BAシートで上司と対話・相談しながらソフト/ハード対策を実施し、改善の進捗はアフター化率としてミエル化し、各事業場の労使一体で開催する安全衛生会議で共有しています。

■温故創新
安全文化・風土を醸成し、類似災害の再発防止を目指す取り組みです。過去に発生した、基本動作不遵守や不安全行動による労働災害、プロセス災害の事例を振り返り、再発防止の徹底と安全への意識付け・気付きを図ります。
災害事例はRC室から毎月、前年度の発災職場に情報発信しています。これを受けた職場では、全員で振り返り、認識を徹底することで再発防止策の風化防止にもつなげています。労使一体となって、類似災害の再発防止に取り組んでいます。

2022年度は、2021年度に引き続き、各事業場における薬傷、挟まれ・巻き込まれ、墜落・転落および熱中症など重篤な労働災害の撲滅を目標に、協力会社も含めて取り組みました。薬傷、挟まれ・巻き込まれ、墜落・転落対策については、従来から行っている作業前安全アセスメントを全事業場共通の仕組み「ホワイトボードKY」※2によって展開し、取り組みを推進しました。熱中症対策では、塩分・水分補給環境の整備や休憩所の設置、マスク着脱ルールの徹底、対策・予防グッズの利用促進などを進めました。

2022年度の労働災害件数は、グループ全体では42件(休業災害23件、不休災害19件)、うち死亡事故は0件でした。これらの事例は、社内規則に則り、発災後速やかに「災害・トラブルデータベース」で発災内容、原因をRC室と共有し、暫定および恒久的な再発防止策を検討、実施しています。また、これらの情報は、データベースを通じて他事業場へも水平展開し、類似災害の防止に活用しています。

  • ※1事故、トラブルになりかねない「ヒヤリとした」「ハッとした」事例を記録し、その原因を全員で究明する取り組み。原因を取り除き、より安全な職場環境をつくりあげていく効果があります。
  • ※2作業のリスク洗い出しに漏れや抜けがないよう、共通のフォーマットボードを使って職場の上長・作業者・有識者が一緒に議論し、当該作業の危険予知およびリスク低減策を確認する仕組みです。

労働災害件数の推移(当社グループ)

労働災害件数の推移(当社グループ)

労働災害の度数率の推移(当社グループ)

労働災害の度数率の推移(当社グループ)

労働災害の度数率=(労働災害による死傷者数/延実労働時間数)×1,000,000時間

ESGデータ集労働災害関連データ

熱中症/薬傷予防パトロールの様⼦
熱中症/薬傷予防パトロールの様⼦

熱中症/薬傷予防パトロールの様⼦

労働安全向上の取り組み

社内および協力会社への安全教育

当社グループでは、独自の研修内容を策定し、必要となる技術や技能の他、定期的に安全教育を実施しています。

■教育訓練センター(TRC)での取り組み
当社グループでは、化学プラント技術や知識を学ぶための研修として「教育訓練センター(TRC)」を設置しており、全作業員を対象に過去のトラブルを教訓に作成された仕組みやルールの背景・目的を学び、安全意識を高める教育を行っています。また、専用設備を用いた挟まれ・巻き込まれ体感、静電気、溶剤・粉塵爆発、圧力、被液などの危険体感教育も実施しています。2022年度は397名がTRCで受講し、設立(2002年)以来の累計受講者数は約8,561名となりました。

■各事業場での取り組み
各事業場では、生産形態に応じた事業場固有のモノづくりの技術や労働安全衛生・環境保全・化学品管理の教育を実施しています。また、事業場固有の教育訓練センター分室(TRC分室)を設け、過去に事業場で発生したトラブルの情報共有と疑似体感などを教育する場としています。2022年度は、各事業場のTRC分室総計で延べ19,000名以上が受講しました。
なお、入構する協力会社や工事関係者には事業場内安全ルールや理解度確認とともに、作業現場固有の安全教育を実施しています。
さらに過去発災があった場所には、風化防止と注意喚起を目的に、トラブル事例の表示をしています。発災の内容や原因・再発防止策は、経営層や発生部門外の事業場とも「災害・トラブルデータベース」で共有しています。

その他、人財育成プログラムの新任進級者を対象としたキャリア開発研修でも「安全を最優先としたモノづくり」への理解を深めるため、1982年に堺工場で発生した爆発火災事故の経緯や、当時の新聞記事・映像などで「災害とリスク管理」の考え方についての教育を行っています。また、専門能力開発の技術者人財育成プログラムでは、HAZOPや、総合アセスメント・技術アセスメントなどのアセスメント手法セミナー、環境マネジメントシステムなどのカリキュラムを導入しています。

Hazard and Operability. 潜在的危険要因と運転操作の問題を設計にフィードバックするための、定性的安全解析法です。

グループ企業安全交流会

3Sや安全に関する気付きや感性を磨くとともに、グループの一体感を醸成する目的で、労働組合の協⼒の下「グループ企業安全交流会」を2014年度から開催しています。当社グループの国内生産現場からリーダークラスが一堂に会し、工場見学をはじめ3Sを切り口とした改善事例や工夫点について、グループ討議により意見交換をしています。参加者は交流会で得た知見を基に、各々の職場で中心的存在となり、安全確保に向けたさらなる改善に取り組みます。2022年度は2021年度と同様に、新型コロナウイルス感染拡大のリスクを考慮し、開催を見送りました。

安全交流会の実施状況

横にスクロールします。

年度 開催場所 参加⼈数(名)
2022
2021
2020
2019 播磨⼯場 12
2018 神崎⼯場、ダイセル物流(株) 尼崎営業所 25
2017 DMノバフォーム(株) 岡⼭⼯場 18
2016 広畑⼯場 18
2015 播磨⼯場 19
2014 網⼲⼯場 21
グループ企業安全交流会での職場見学
グループ企業安全交流会での職場見学
グループ企業安全交流会での職場見学

グループ企業安全交流会での職場見学

「安全作業必携」「工事に関する社内基本ルール集」の作成・配布

モノづくりに関する安全ルールには多くのものがあります。当社グループでは2013年度、モノづくりに携わる全社員が同じ基盤に立ち、安全確保に「気付き」「考え」「行動」できる人財となるための一助として、「安全作業必携」「工事に関する社内基本ルール集」を作成しました。

■安全作業必携
現場作業における保護具の種類や着用基準、工具の使用方法など安全ルールの要旨をいつでも・どこでも確認できるよう、ポケットサイズにまとめました。2018年に「より分かりやすく・見やすく」を目指し図表や画像を多用した第3版、2020年には静電気災害予防や新ユニフォームの着用ルールなどを盛り込んだ第4版を発行してきました。2022年4月には、静電気災害防止規則(粉体編/液体編)の改定に伴う修正や、高所作業安全の追加などを行い、第5版を発行しました。

■工事に関する社内基本ルール集
「安全版」と「品質版」の2種類を発行しています。「安全版」は現場の声を生かし、工事の基本ルールを全社統一版としてまとめたものです。これらの遵守は、個人の安全のみならず、同じ現場で作業している仲間の安全確保に必須であるという考えの下、作成しています。「品質版」は、「工事品質不具合に起因する過去の重大トラブルを再発させないためのルール」に特化し、施工品質ポイントへの理解を深めるためのものです。いずれも、2023年4月、最新の情報を盛り込んだ改定版を発行しました。

安全作業必携
安全作業必携
工事に関する社内基本ルール集(安全版)
工事に関する社内基本ルール集
(安全版)
工事に関する社内基本ルール集(品質版)
工事に関する社内基本ルール集
(品質版)

協力会社/取引先への安全プログラムの提供

各事業場において安全を確保する取り組みとして、当社グループ企業の社員はもとより、製造や工事などの作業に従事する全ての協力会社社員を対象に、労働安全および保安防災に関わる安全ルールの教育を行い、安全意識の向上に努めています。プログラムは初めての入構時と定期修繕工事前など、定期的に提供しています。

無災害記録証(第1種)を受領

無災害記録証とは、厚生労働省が一定期間労働災害を発生させなかった事業場に授与する記録証です。播磨工場が2021年7月26日で無災害記録440万時間を達成したことで、厚生労働省労働基準監督署より第1種無災害記録証をいただきました。