サステナビリティトップコミットメント

モノづくりの革新に挑み続け、持続可能な社会とダイセルの成長の両立を実現してまいります。株式会社ダイセル代表取締役社長 小河義美モノづくりの革新に挑み続け、持続可能な社会とダイセルの成長の両立を実現してまいります。株式会社ダイセル代表取締役社長 小河義美

大きな転換点を乗り越える

2019年度の当社業績は、残念ながら4期連続の減益となりました。米中貿易摩擦の激化やそれに伴う中国景気の減速など、経済・社会の逆風はありましたが、業績低下の要因を外的環境の変化にのみ求めていては生き残ることはできません。

そもそも、現在の社会情勢は、常にダイナミックで急速な変化となって、私たちを飲み込もうとしています。SDGs(持続可能な開発目標)は、事業戦略自体を大きく見直す機会となりますし、AIやIoTの普及は、自動化やロボット化を促進するだけでなく、従来の社会構造やビジネスモデルを覆すような変革をもたらしつつあります。また、新型コロナウイルス感染症の地球規模での広がりは、人々の暮らしや社会機能に甚大な被害をもたらしただけではなく、これからの社会や経済の仕組みにも大きな変化をもたらすことが予想されます。

こうした大転換の時代にあるからこそ、自らの意思で、スピードと柔軟性を持った企業集団に変わっていくことが大切です。たとえ先行き不透明な社会情勢にあっても、私たちは世界各国で働く1万2,000名のグループ社員、多様なステークホルダーの皆様と手を取り合い、挑戦を続けてまいります。

長期の方向性とありたい姿

歴史的な転換期に100周年を迎えた昨年より、当社は、新たな時代を見据えた第4次長期ビジョンと、その具現化に向けた中期戦略の議論を続けてきました。その議論のさなかに、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大という、これまでに経験したことのない難局を迎えました。このパンデミックを通じて人々の生活様式や企業の経済活動、サプライチェーンなどに発生している変化を目の当たりにし、改めて長期や中期の議論を振り返ると、私たちが目指している speed &flexibility という方向性に間違いはないという思いを新たにしています。

新しい長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』では、「仕事の仕方、会社の形を変えていくこと」「技術と技能の融合で、モノづくりを継続的に進化させていくこと」「信頼される価値の高いモノづくりをしていくこと」という三つの考えを重視しています。

「会社の形を変えていく」とは、従来の会社の概念を超えてサプライチェーン全体でより高い価値を生み出していくことを意味しています。当社グループは、決して私たちだけで成り立っているわけではなく、お客様がいて、仕入先様がいて、工事をするときには協力会社様と一緒になってやっています。会社の枠を超えて考えると、工場は一つの「工程」で、この工程がつながって長いサプライチェーンになります。私たちの工程をお客様に選んでもらうために、コストパフォーマンスやスピードを上げることはもちろん、お客様のところに飛び込んで本当に求められているものを考え、発掘し、貢献することが重要だと考えています。場合によっては他社の製品を紹介してでも課題解決に貢献する。そこで自分たちには何が足りないのかをしっかり認識し他社品を凌駕する製品を開発することで、自分たちのモノづくりの実力も高まっていきます。このように、既存の会社や工場といった組織の枠を超えて、縦や横のつながりを柔軟に広げていくクロスバリューチェーンによって、より大きな価値を社会に提供できるサプライチェーン、バリューチェーンを構築し、これに関わる皆がワクワクするような成長を目指します。

二つ目に、「モノづくりを継続的に進化させていくこと」にも注力します。モノづくりを強くするためには、理論や解析に基づく技術(ノウホワイ)と、経験に裏打ちされた勘やコツといった技能(ノウハウ)の両面を磨き上げていくことが大切です。ダイセル式生産革新を構築した時、技術者としてプラント運転の解析を行いましたが、技術の解析だけでは解けない膨大な数のノウハウが現場に蓄積されていることが分かりました。このような現場のノウハウの裏には技術の弱さをカバーしている知恵や経験があり、それを解析していくことで技術の改善、革新につながっていきます。そして、改善された技術を前提に、現場は、さらに新たなノウハウを見出し蓄積していきます。こうした技術と技能が相互に影響しあってスパイラルアップしていくところに日本のモノづくりの強さがあります。これは、グローバルに展開する事業でも同じであり、海外の工場にも広げていくことができます。技術スタッフと現場作業者の枠を超えて、一人ひとりが知恵を出し合って、総合力としてモノづくりの力を高めていく会社が生き残っていくと考えています。

三つ目に、製造業として「信頼される価値の高いモノづくり」を継続、進化させることを挙げています。一つひとつの製品に安全と品質が織り込まれてこそ、私たちのモノづくりには価値が生まれ、社会から認められます。当たり前のことですが、その当たり前を地道に、しっかりと継続していくことが重要です。さらに、持続可能な社会の実現に貢献していくためには、それを支える製品を創出して社会に提供していくとともに、モノづくりのプロセス自体が、人や地球にやさしいものでなければなりません。製品開発におけるバイオマスプロダクトツリーの構築、省エネや省資源に寄与するエネルギーオフセットプロセスの実現にも取り組んでいきます。当社は創業以来、天然由来の素材であるセルロースを深耕してきましたが、このセルロースを出発原料にして、石油由来ではない機能材料を次々と世の中に提供できることが、ダイセルらしいモノづくりにつながっていくと考えています。エネルギーオフセットプロセスでは、エネルギー収支の全体でエネルギーロスのないモノづくりを目指しており、野心的な目標だとは思いますが必ず実現させ、地球環境と共生するプロセスの構築を目指します。

人間中心の経営を貫く

私たちは安全・品質・コンプライアンスを最重要基盤とし、誠実さと地道な努力そして自らの変革により、持続可能な社会の実現とダイセルグループの事業拡大を両立していくためのサステナブル経営方針を定めました。それは人間中心の経営であり、働く人の幸せ、幸せを提供する環境、社会と人々の幸せを実現し企業価値を高めることです。

一人ひとりの社員とその家族の幸せが前提にあり、その実現が社会の幸せにつながっていくことが、私のサステナブル経営方針の根幹をなす考え方です。会社は生き物ではなく、そのなかに存在する「人」、同じ世代の一部が縁あって一緒になって働いている「人」がいます。会社で過ごす時間は人生の3分の1以上、その会社が楽しくないと何のための人生だと。社員が幸せを感じ、いきいき働くことができるから、家族も幸せになります。社員一人ひとりが変化を楽しみ、ワクワクしながら働くことが会社の成長につながり、会社が大きくなることでまた社員も幸せになります。

常々、年齢や性別、国籍、障がいの有無を問わず、誰もがいきいきと働ける職場づくりの必要性を説いてきました。「工場は危険だから、障がいがある人が働ける場所は少ないと思考停止するのではなく、障がいがあっても安心して働ける工場、究極の安全な工場を作ってみてはどうだろう」と機会があるごとに社内に問いかけています。時代がいくら変わっても、中核をなすのは、一人ひとりを大切にする「人間中心の経営」であり、誰一人脱落させることなく、皆で進んでいくことを大切にしていきます。

また、当社は、2020年4月、国連が提唱する「グローバル・コンパクト」への支持を表明しました。ダイセルグループは、グローバル・コンパクトが掲げる10原則に基づき、グローバルな視点から「人間中心の経営」を推し進めることが、ダイセルグループの成長、そして社会の持続可能性への貢献につながることを確信しています。
私たちは、多様なパートナーと共感、共鳴し合い、共に新しい価値を創造し、人々を幸せにする会社を目指します。ステークホルダーの皆様にはよりいっそうのご指導・ご支援をいただきたく、何卒よろしくお願いいたします。

代表取締役社長
小河 義美