IR情報 / 経営情報事業等のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、ここに記載した事項は、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
また、将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日(2025年6月18日)現在において判断したものであります。
市場リスク
- 1市場の急激な変動に係るリスク
経済の変調による需要の急激な減少や、他社の大型プラント建設による供給過剰など、市場環境は様々な要因の影響を受ける可能性があります。当社グループの対面市場である自動車関連やIC半導体・電子デバイス分野はマーケット環境の変化が激しく、その変化が当社製品の販売価格のみならず販売量にも大きな影響を及ぼします。
また、米国の関税政策とそれに起因する各国の関税政策が世界経済の減速につながり、当社や当社顧客製品の商流や需要などに変化をもたらし、業績に影響を与える可能性があります。対応策
当社グループでは新規用途・市場の開拓とともに、コストダウンの徹底など、販売数量・収益の確保の取組みを強化しております。各国の関税政策については動向と事業への影響を適時把握し、状況に応じて最適地からの供給や、増加コストの販売価格への転嫁などを検討してまいります。
- 2為替変動に係るリスク
為替相場の変動は、当社グループの輸出入取引に係る交易条件、および海外グループ会社の業績の邦貨換算結果等に対して影響を与えます。
通常、円安は当社グループの業績に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼすと考えております。また、海外グループ会社においては、その所在国通貨と異なる外国通貨との為替相場変動により、業績等に影響を及ぼす可能性もあります。対応策
先物為替予約取引などを用いてヘッジを行っておりますが、当該リスクを完全に回避できるものではありません。なお、当社グループの海外売上高比率は、2025年3月期において67.3%であります。また、当社の試算では米ドル・円レートが1円変動すると、連結売上高で年間約27億円、連結営業利益で年間約9億円の変動をもたらすと算定しております。
- 3主要原料(メタノール)の価格変動に係るリスク
当社グループの主力製品の多くのものが直接あるいは間接的にメタノールを原料としています。その購入価格の上昇は業績に多大なる影響を与えるリスクがあります。また、メタノールは化学品の原料という位置付けのみならず、近年はクリーンエネルギーとしての側面も持っており、世の中の環境問題への関心の高まりなどで、化学品原料以外の需要動向により価格が変動するリスクがあります。対応策
長期契約やメタノール製造会社への出資など、比較的安価なメタノールを安定的に購入するための手段を講じております。
- 4その他原燃料価格の変動に係るリスク
当社グループは、常に安価かつ価格の安定した原燃料への転換や、製造方法改善によるコストダウンを図っております。しかしながら、経済全体のインフレ傾向や地政学的リスクの影響もあり原燃料価格の変動は続いており、今後もこの傾向は当面は変わらないと思われます。対応策
原燃料の高騰が続く場合には、上記の各種コストダウン施策に加えて、製品販売価格への転嫁等によりできる限りの吸収を図っております。
事業リスク
- 1海外事業展開拡大に係るリスク
当社グループは、引き続き積極的に海外事業を拡大しており、それに伴う、予期しえない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人財の採用・確保の困難、テロ、戦争等による地政学的なリスクは増大していると考えられます。特に同じ事業を中国・アジア地域・欧米などで広域に展開している例も多く、そのために経済安全保障上の問題により事業展開に支障が生じるリスクも存在していると考えております。対応策
当社グループではグローバルでのサプライチェーン体制の見直しを実施するなど、特定国の政策変更等が発生した場合でもその影響を軽減すべく取組みを進めております。
- 2人財確保に係るリスク
当社グループが事業の継続的な発展を実現するためには、経営戦略やグローバルな組織運営を担えるマネジメント能力に優れた人財の確保や育成、専門技術に精通した多様な人財の確保が重要な課題であると認識しております。
しかし、日本国内での少子高齢化や労働人口の減少、海外拠点での雇用環境の変化によって、必要な人財の確保・育成が計画どおりできなかった場合、長期的観点から当社グループの事業及び業績に大きな影響を与える可能性があります。対応策
当社グループでは、積極的な新卒採用や経験者の通年採用を展開し、公正な人事評価・処遇制度などの仕組みを構築することで、自律的に活躍する人財の育成、定着を図っております。また、次世代経営人財の教育プログラムでは後継者候補の育成にも取り組んでおります。
- 3物流に係るリスク
日本国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」等の影響もあり運送ドライバーや荷役作業員の人手不足の拡大が予想され、物流費の高騰、当社グループの製品の競争力の低下につながるリスクがあると認識しております。対応策
従前より当社グループでは系列の物流専門の企業を持ち、グループ全体のガバナンスの中で効率的且つ合理的な輸送体制の実現に注力してまいりました。また2022年よりグループ横断の「物流改革プロジェクト」を設置し、他社連携やグローバル物流強化に向けた戦略の策定に取り組んでおります。2023年からは経済産業省及び国土交通省主導による、化学品ワーキンググループにも参画し、共同物流の具現化に向けて取り組んでおります。
- 4原材料等の調達に係るリスク
当社グループの主力プロダクトである化学製品は、高付加価値の高機能製品に注力しており、その原材料も品質規格が大変厳しく特殊なものが多いため、サプライヤーの数も限られます。そのため新規調達先の確保や要因変更の対応に迫られるなどの原材料等の調達に係るリスクがあります。対応策
原材料を複数のサプライヤーから購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めております。
- 5資本提携・企業買収等に係るリスク
当社グループでは、更なる事業成長を目指して、グループのシナジー効果が期待できる企業買収・資本提携等には積極的に取り組んでおります。
これらの投資について予期したとおりの成果が獲得できない場合、また事業環境等の急激な変化により事業計画に大幅な修正が生じた場合には、のれんの減損や投資損失が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。対応策
自社による調査の他、外部機関も活用して徹底したデューデリジェンスを行った上で、投資を決定しております。なお、予期したとおりの成果が獲得できないと判断した場合は、速やかに撤退など事業計画の見直しを行っております。
環境リスク
- 1感染症に係るリスク
新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの重大な感染症については、感染拡大予防のため経済活動が制限されたり、当社グループや取引先で罹患者が大量に出た場合に、プラントの稼働低下や生産停止、サプライチェーンの分断などが発生するなど、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対応策
感染症発生時には対策ガイドラインを策定し、在宅勤務の併用などにより従業員の健康を確保してまいります。また、損害や業務レベルの低下を最小限化しつつ、事業の継続あるいは早期復旧を図るための事業継続計画(BCP)を策定・運用しております。
- 2自然災害に係るリスク
自然災害により重大な損害を被った場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。当社グループの主要な生産拠点のひとつであるポリプラスチックス㈱富士工場が「東海地震に係る地震防災対策強化地域」内に立地していることや、南海トラフ地震など各地で巨大地震が発生し得ること、また想定したレベルをはるかにしのぐ広域災害が発生しうるリスクがあります。対応策
事業の継続あるいは早期復旧を図るための事業継続計画(BCP)を策定・運用しており、耐震強度補強や災害発生に備えた防災訓練、必要な物品の備蓄、初動対応訓練などを実施しております。また、サプライヤーの被災の影響による原材料調達不可・遅延が発生する可能性も考慮し、常日頃からサプライヤーとの情報交換を密にしております。
- 3環境規制に係るリスク
環境保全に対する社会要請の高まりにより、環境規制の強化が進んでおります。当社グループの生産活動においてはその規制に関する法令を遵守するための設備投資を行ってまいりました。また、化学製品自体の環境に与える影響も重視されてきており、環境規制による販売への影響が、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。対応策
当社グループでは、規制に関する法令を遵守するための設備投資や、環境規制に適合した製品の開発、販売を行っております。
- 4気候変動に係るリスク
気候変動に伴う異常気象等が当社グループの工場の操業やサプライチェーンに影響を与える物理的リスク、GHG(温室効果ガス)排出削減のための設備投資が増加するリスク、あるいは低炭素社会への移行に対応できずに原燃料価格や電力価格が上昇するリスクは、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。国内においては、2026年度から排出量取引制度(GX-ETS)の本格導入が公表されるなど、GHG排出に関する費用発生のリスクが高まってきていると考えております。対応策
ダイセル式生産革新を基盤とした生産プロセスにおけるムダ・ロスの徹底的排除や革新的技術の導入、グループ全体のエネルギー使用量の最適化など、省エネルギーに努め、GHG排出量の削減に取り組んでおります。
品質・製造リスク
- 1製品品質保証・製造物責任に係るリスク
当社グループが製造した製品に起因する損害が販売先などで発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。当社製品は幅広い領域で使用されており、最終製品の回収が行われることになれば、大きな賠償責任を負う可能性もあります。対応策
製品の品質保証体制を確立し、製品の安全性確保および不具合品の流出防止に努めております。また、万一に備え、賠償責任保険も付保しております。
なお、2022年に、当社グループ会社のダイセルミライズ株式会社が販売する樹脂製品の一部において、米国のUL(第三者安全科学機関)の認証に関し、不適切な行為が判明したことについては、現時点で当社グループにおいて同様の品質不適切行為が行われていないことを確認し再発防止対策を完了しました。 - 2事故に係るリスク
当社グループは、化学品を扱う企業であり、工場で火災・爆発等の産業事故災害が発生した場合には、被害は甚大になり、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。対応策
日頃よりリスクアセスメントを実施し、危険源の特定とその対策を講じており、当社グループ内で発生したトラブルについては、原因の掘り下げや対策の妥当性などを討議し、類似災害防止に取り組んでいます。また、火災・爆発等の発災を想定したクライシスアセスメントの強化や、遠隔消化設備の導入など人的被害を最小限に抑制し発災時の対応を行うインフラ面の強化、保安防災訓練の継続的な実施などをおこなっております。
研究開発リスク
- 1研究開発に係るリスク
当社グループでは、既存事業の強化および新規事業創出のため積極的に研究開発活動を行っております。しかし、近年ますます技術革新のスピードは速くなっているので、計画どおりに新製品の開発ができなかった場合、事業化につながらなかった場合は、投下した研究開発費を回収できないといったリスクがあります対応策
研究テーマの選定や資源配分について経営次元での徹底した議論を行い判断を行うとともに、産学官共同研究、他社との協業などを通じて研究開発の効率を上げ、事業化に結びつけて行くよう取り組んでおります。
- 2知的財産権に係るリスク
当社グループは、「当社グループの知的財産を保全するとともに、他者の権利侵害は行いません」とのダイセルグループ倫理規範のもと、知的財産関連情報の調査、知的財産権の取得・管理、適切な契約の締結・管理など戦略的な活動に取り組んでおります。しかしながら、当社グループが第三者の知的財産権を侵害している等の予期せぬ警告や訴えを受ける、あるいは第三者に知的財産権を無断で使用されるおそれがあります。このような事態が発生した場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。対応策
当社グループは、「当社グループの知的財産を保全するとともに、他者の権利侵害は行いません」とのダイセルグループ倫理規範のもと、知的財産関連情報の調査、知的財産権の取得・管理、適切な契約の締結・管理など戦略的な活動に取り組み、リスクの低減を図っております。特に新製品や新技術の開発時に、先々の当社の事業展開を優位に進め、他社からの侵害訴訟をけん制するためにも競合相手の事業を意識した知的財産権の取得が重要と認識し、注力しております。
コンプライアンスリスク
- 1訴訟に係るリスク
当社グループは、国内外の法令等や契約の遵守に努めております。しかしながらグローバル、かつ多様な分野で事業を行う中で、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあり、重要な訴訟等の提起を受ける可能性があります。
裁判等において不利益な決定や判決がなされた場合には、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。対応策
当社事業に関連する法令等の情報を収集し、教育・啓発に努めるとともに、重要な契約締結や法令等の遵守のために必要な手続きの仕組みを設け、そのリスク低減に努めております。
- 2情報セキュリティに係るリスク
通信ネットワークに生じた障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウエアもしくはソフトウエアの不具合・欠陥、コンピュータウィルス・マルウェア等外部からの不正な手段によるコンピュータシステム内への侵入等の犯罪行為や役職員もしくは委託業者の過誤等により、社内の情報が流出し、または改ざんされるリスクがあります。対応策
管理体制の構築、IT技術動向の変化に応じたセキュリティソフトや端末の導入・更新などを行っております。また、全役職員を対象に「不審メール対応研修」などの教育を実施しております。
- 3人権に係るリスク
近年、人権に係るリスクは大変重要になっており、人権の尊重は当社グループ内で徹底されていればよいのではなく、当社グループ外にも求めていくべきものであると考えております。特に新興国を中心としたサプライチェーンにおける人権確保が重要になっており、人権侵害や児童労働等の事実が確認された場合、原材料調達および生産活動の遅延等に関するリスクが顕在化する可能性があります。対応策
当社グループでは「ダイセルグループ人権方針」を定め、人権に関するデューデリジェンスを定期的に実施しています。また、主要サプライヤーには、CSR調達に関するSAQ(Self-Assessment-Questionnaire)への回答を依頼しており、その中に人権尊重および労働環境に関係する評価項目を入れ、サプライチェーン上の人権リスクを確認しています。
その他のリスク
- 1固定資産の減損に係るリスク
当社グループが自ら使用、または第三者に貸与する機械および装置、土地および建物などは、投資計画どおりに収益が得られず、投資額の回収が見込めないなど資産価値の下落に起因する潜在的な減損のリスクにさらされております。当連結会計年度末において、有形固定資産および無形固定資産の帳簿価額の合計は3,301億円であり、想定した事業環境が大きく変わることによる減損のリスクがあります。固定資産の減損損失が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。対応策
営業上のリスク、技術上のリスク、建設スケジュールや投資額の適切性・妥当性を社内評価し、中期戦略上の位置づけ、投資回収年、効率性等も勘案し、総合的に検討・判断したうえで投資を実行しておりますが、案件毎に社内外の有識者も投資審議プロセスに参加するなど、投資計画の精度向上を図っております。