製剤技術
ダイセルの製剤技術についてご紹介いたします。グランフィラーD®、ハイソラッド®はOD錠用コプロセス添加剤です。
いずれの製品もOD錠を作製した際に、成形性と崩壊性を高いバランスで両立します。
- 高い硬度と短い崩壊時間の両立
- 有効成分の高含量化が可能
- 良好な含量均一性
- 様々な添加剤と組み合わせ可能
- 良好な成形性
- 高い硬度と短い崩壊時間の両立
- 有効成分の高含量化が可能
- シンプルな組成
OD錠とは?
OD錠とは、“Orally Disintegrating”の頭文字を取った略称です。口腔内崩壊錠のことを指し、その名の通り、口の中で速やかに崩壊する特殊な剤形を意味します。
OD錠は、胃や腸の中で崩壊する通常の剤形と比べ、「利便性」、「安全性」、「確実性」が高いと考えられます。
通常のお薬は、そのまま服用すると口の中や喉の奥に張り付くこともあり、水と一緒に服用する必要があります。一方、OD錠は唾液程度の少量の水分で簡単に崩れるため、かならずしも水が必須ではありません。そのため、水分摂取量を制限される患者さんに適する他、水が手元にない場合など容易に飲水できない状況(外出時や緊急時)でも、シチュエーションを選ばずにサっとお薬を服用できる利便性があります。また、口の中ですぐに崩壊することから、丸ごと錠剤を飲み込む必要が無くなるため、飲み込みやすく誤嚥のリスクが低いとされています。
OD錠は、嚥下機能の低い高齢者や小児に対して、より安全・確実に服用できる剤形としても普及しています。
OD錠に求められる機能
OD錠は、口の中に入れるまでは取り扱いやすいよう十分な錠剤強度が求められ、口の中では唾液に触れると素早く崩れる機能が求められます。OD錠を製造するには、この相反する2つの性能を同時に満たすバランスの良い処方設計が必要です。
ダイセルのソリューション
一般に普及しているOD錠は速崩壊を担保するため錠剤の強度が不十分になるケースがありますが、当社の造粒技術で構築された製品グランフィラーD®、ハイソラッド®を用いることで、高い強度かつ速崩壊を実現することができます。これらの製品を用いて作ったOD錠は、100Nの錠剤硬度を持ちながら、20秒以下の崩壊時間を達成することができます。
OD錠の技術変遷
OD錠の研究開発は1980年代頃から既に行われており、その源流は凍結乾燥法によって得られる鋳型錠製剤とされています。今日に至るまで技術は発展し続け、1990年代には湿式打錠法が、そして2000年代に入って乾式打錠法によるOD錠の製造がより一般的になります。
乾式打錠法とは、有効成分と添加剤等を混合し、その混合物を乾燥状態で打錠する製造法です。各添加剤メーカーより乾式直打プロセスに適した添加剤が上市されており、当社ダイセルも2014年にグランフィラーD®を、2020年にハイソラッド®を上市しました。
乾式直打とは?
錠剤の製造法は、湿らせた粉体を型に入れて成形する「湿製法」と、粉体を杵臼で直接圧縮する「圧縮打錠法」があります。
圧縮打錠法は技術の多様化が進んでおり、さらに様々な製造法に細別化できます。圧縮打錠法の代表例として、直接打錠法(直打法、セミ直打法)、湿式顆粒圧縮法(湿式法)、乾式顆粒圧縮法(乾式法)などがあります。
直打法には表のようなメリットとデメリットがあります。
直打法は、湿式法、乾式法と比較してシンプルな製造工程であることが特徴です。工程数の少なさは、製造コストの削減に直結します。製造工程では水を用いないため、水分に弱い有効成分も取り扱うことができます。しかし、シンプルな製造法ゆえのデメリットもあります。造粒工程が無い直打法では、原料物性によっては打錠障害、錠剤重量の変動、偏析などが大きな課題となります。
- メリット
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- 水に弱い有効成分も取り扱える
- 製造工程がシンプルである
- 低コストで錠剤を製造できる
- デメリット
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- 打錠障害が起きやすい
- 錠剤重量が変動しやすい
- 含量均一性の確保が難しい
ダイセルのソリューション
偏析の予防
ダイセル独自の造粒技術によって製造されるグランフィラーD®、ハイソラッド®は、非球形でいびつな粒子形状を形成しています。この「非球形な粒子」は、球形な粒子と比較して混合均一性が良好であると考えられます。粒子表面の凹凸に混合される他の粒子が引っかかり、「物理的絡み合い」を生じさせることで、偏析を予防できるためです。グランフィラーD®、ハイソラッド®はこのいびつな粒子形状を活かし、微小なAPIから、顆粒のAPIまで、様々なサイズ、様々な形状の粒子の偏析の防止に貢献します。
コプロセス添加剤とは?
コプロセス添加剤とは、二種類以上の原料を造粒してつくられる添加剤です。異なる機能を持つ原料を組み合わせ、造粒操作によって得られる粒子(=造粒物)は、単独の添加剤では生み出せない新たな機能が付与されます。
コプロセス添加剤を用いることで、開発段階においては、添加剤の選定や試作時間の短縮が期待できます。また製造段階においては、造粒工程を省略でき、混合と打錠のみでも安定した製造ができます。
コプロセス添加剤を用いるメリット
- 開発段階
- OD錠としての機能を持たせるための添加剤の選定、処方検討期間を短縮できる
- 製造段階
- OD錠の機能を持たせるための添加剤の造粒工程を省き、原料の混合+打錠のみでも安定した製造工程を実現できる
ダイセルのソリューション
グランフィラーD®、ハイソラッド®も、このコプロセス添加剤に分類されます。
グランフィラーD®、ハイソラッド®は、複数の医薬品添加剤をダイセル独自の配合組成で混合し、目的に合わせた特殊な造粒手法によって製造されています。各原料の特徴が最大限発揮されるような設計であり、乾式直打によるOD錠製造に適した粉体物性・機能を有します。
グランフィラーD®、ハイソラッド®だからできること
グランフィラーD®、ハイソラッド®は、高機能なOD錠の開発に貢献します。詳細な技術情報は各製品ページまたはホワイトペーパーに掲載されています。
苦味マスキングされた有効成分を適用したOD錠の製剤設計
口の中で崩壊するOD錠は、通常の錠剤よりも薬の苦味が気になる方が多く、服薬アドヒアランスの低下が懸念されます。ダイセルのコプロセス添加剤は、苦味マスキングされた有効成分を用いた場合であっても、良好な崩壊性・成形性を保ちます。こちらのホワイトペーパーでは、シクロラボ社との共同研究による成果の一部をご紹介しています。
コプロセス添加剤の連続生産システムへの適用事例(直打プロセス)
医薬品の連続製造システムは、近年研究開発が盛んに行われており、製薬企業や医薬品製造受託企業でも導入を検討する動きがみられます。固形製剤の連続生産において、複数の原料を取り扱う場合、各原料のわずかなロット間差が最終製品に影響を及ぼす懸念が考えられます。
ダイセルのコプロセス添加剤は、各原料のロット間差を相殺し、均一となるよう設計されているため、医薬品の安定製造に貢献できる可能性があります。
ミニOD錠の製剤設計
OD錠は嚥下力の低い患者さんに適していますが、小児を対象とした場合はさらなる剤形の工夫が必要です。ミニタブレットという特殊な形状は、通常のOD錠よりも早く崩壊し、用量調節の面でも優れています。こちらのホワイトペーパーでは、ミニタブレット型OD錠の作製事例をご紹介しています。