バイオマスに取り組む意義

石油に頼りすぎない、森林化学の実現を。

カーボンニュートラルの鍵を握る技術がバイオマス。バイオマスとはエネルギーや物質に再生が可能な、動植物由来の有機性資源(石油や石炭などの化石資源は除く)です。有機物なので燃焼させるとCOが出ますが、その炭素は、そのバイオマスが成長過程で光合成により大気中から吸収したものであり、現在の大気中のCOを増加させないと考えてよいとされます。それに対して石油や石炭など化石燃料に含まれる炭素は数億年前のもの。それらを地中から採掘して使用することは現在の大気中の二酸化炭素を増加させます。ですので石油に頼りすぎない選択肢が早急に必要なのです。けれどバイオマスがすべて正しいとも言えず、まだ様々な問題があるのも事実。食料由来のバイオマスは食糧危機、森林由来のバイオマスは、森林破壊にもつながります。私たちは豊富にある原料を再生しながら使い続ける持続可能なバイオマスのしくみを開発し、社会に実装しなくてはなりません。

だからこそ私たちは日本の国土の約7割を占める森林に着目しました。日本には豊富な森林があるものの、多くが杉や檜などの単一種を戦後に植林したまま放置されています。そういう森は陽が差し込まず暗いままで、多様な動植物が住みにくく、土壌も脆く崩れやすく、さらに木の樹齢も50年を越えていて COを吸収しにくくなっています。

この森林の木材を資源にしながらレジ袋や食品トレーやカトラリーをはじめ様々なバイオマス製品にして、森がある地元で地産地消し、さらに新たに植林をすることで地域経済の活性化と資源の循環をめざします。

重要なのはその木材を溶かすプロセス。従来は木を溶かしてパルプにするには高温のエネルギーが必要で COも多く排出していましたが、ダイセルは木材を環境負荷の少ない常温で溶かせる新技術と、溶かした木材を様々な機能を持つ素材にする新技術を、京都大学や金沢大学と開発しました。森の木だけでなく、たまねぎの皮や貝の殻など農業や水産業の廃棄物をバイオマス資源にすることも可能になります。

ダイセルはもともと植物由来のプラスチックであるセルロイドをつくる会社で、100年以上の歴史と、世界有数の知恵と技術を有しています。いわば植物を化学するパイオニア。私たちダイセルは、日本に豊富にある森林を化学の力で、持続可能な資源に変え、領域を越えてあらゆるパートナーの皆様とつながりながら、日本発の循環型社会モデルを創造する道なき道を、切り拓きたいと強く願っています。