サステナビリティ / 社会性報告 責任ある調達
当社グループは、品質・価格・納期のみならず、環境や人権・労働などの社会側面にも配慮した、責任ある調達活動を推進しています。また、調達に関する考え方を「購買基本方針」「ダイセルグループCSR調達ガイドライン」に定め、サプライヤーの皆様に遵守いただき、サプライチェーン全体でサステナブルな社会の実現に向けて、共に取り組んでいます。
購買基本方針
ダイセルグループ購買活動では、当社の基本理念を実現するため、行動方針に則り、以下の購買基本方針を実践します。
- 1公正で合理的な取引
- 公平で公正な参⼊機会を提供し、従来の実績にこだわることなく、グローバルに開かれた購買活動を⾏います。
- 品質・価格・供給安定性・技術開発⼒・環境保全への配慮・安全確保への取り組み等に基づき、総合的に考慮します。
- 2法令の遵守・秘密保持
- 法令を遵守するだけでなく、企業倫理に基づき社会的良識をもって行動します。
- 取引上で得られた秘密情報を守秘し、また第三者の知的財産権を侵害しません。
- 3信頼関係の構築
- お取引先様との相互利益尊重と信頼・誠実の精神に基づき、より良いパートナーシップの構築に努めます。
- 4CSRの⾒地に⽴った取り組み
- 社会が求める企業の責任や価値の向上に応える活動に取り組み、お取引先様とともに持続的な発展ができることを⽬指します。
2018年5月7日制定
ダイセルグループCSR調達ガイドライン
当社グループは、購買基本方針に基づき「ダイセルグループCSR調達ガイドライン」を制定しました。購買取引の基本となる本ガイドラインは、当社グループはもちろん、グローバルベースでサプライヤーの皆様に遵守いただき、サプライチェーン全体でサステナブル社会の実現に向け、積極的な取り組みを進めています。
2022年度までに、当社グループの主要サプライヤー768社(総調達額の85%以上)を対象に、「ダイセルグループCSR調達ガイドライン」の内容を理解いただけたことを確認するため「確認完了書」を配布し、678社から署名をいただきました(回答率88%)。
また、2020年度以降、新規サプライヤー導入時には「確認完了書」への署名をルール化しており、新規サプライヤーからの「確認完了書」への回答率は100%です。
ダイセルグループCSR調達ガイドライン
- 1法令・社会規範の遵守
- 事業活動においては、商取引、労働、環境、安全、知的財産などに関する法令や社会規範を遵守し、企業倫理に基づいた公平、公正な取引を⾏います。
- 事業活動を行う各国や地域で適⽤される法令を遵守することに留まらず、現地の⽂化や慣習を尊重します。
- 健全な商習慣や社会的常識の範囲を超えた⾦品や接待を提供、あるいは受領するような⾏為は⾏いません。
- 2⼈権尊重、及び労働環境
- 強制的な労働、児童労働、低賃⾦労働などに代表される⾮⼈道的な労働⾏為を⾏いません。
- 従業員の差別を撤廃し、機会均等と処遇における公平の実現に努めます。
- ハラスメントや職場における暴⼒⾏為などを防⽌します。
- 適正な賃⾦の提供、適切な労働時間の管理などを行い、従業員の権利を尊重します。
- 3安全衛⽣
- 安全で清潔な労働環境を整備し、従業員の健康管理に配慮することで、労働災害、労働疾病を防⽌します。
- 安全を守るため、発⽣しうる災害や事故などを想定し、緊急時の対応策を策定します。
- 4環境
- 製造、包装、物流などにおける省資源化、省エネルギー化、CO2排出の削減、廃棄物の削減など、環境負荷の低減に取り組みます。
- 地球環境の保護や⽣物多様性の保全に配慮した事業活動を⾏います。
- 5健全な事業経営
- 相互利益尊重と信頼、誠実な関係を構築するために、健全かつ透明性のある事業経営の推進と適切な情報の開⽰、共有に努めます。
- 反社会的勢⼒に利益を供与する⾏為、インサイダー取引などの不適切な利益の供与や受領を⾏いません。
- 6品質・安全性、及び技術の向上
- 顧客の要求品質を満たし、安全な製品の提供に努め、製品やサービスに関する正確な情報を提供します。
- 新たな技術開発、品質の改善を推進し、製品の開発や提案に努めます。
- 7安定供給と変化に対する柔軟な対応⼒
- 取り決められた納期を守り、安定供給に努めます。
- 天災、事故などの不測の事態に対応するため、事業継続計画を策定します。
- 8情報セキュリティ
- コンピュータ・ネットワーク上の脅威に対する防御策を講じて、⾃社及び他社に被害を与えないように管理します。
- 顧客、第三者、従業員の個⼈情報を適切に保護します。
- 顧客や第三者から受領した機密情報を適切に管理し、漏洩防⽌に努めます。
- 9地域・社会への貢献
- 地域社会との連携を⼤切にし、社会の発展に貢献できるように努めます。
- 10CSRの推進とサプライチェーンへの展開
- ⾃社のCSRを積極的に推進し、活動への取り組み状況の公開に努めます。
- サプライチェーン全体へのCSR推進のため、⾃社の取引先においてもCSRを働きかけます。
- 社会問題として、その遵守が要請されるもの(『紛争鉱物規制』など)については、責任ある調達を推進します。
2018年6月制定
サステナブル調達の推進体制
当社グループでは2020年度より、当社グループとして一体感をもったサステナブル調達の推進を目的に、社長を委員長としたサステナブル経営委員会の下で調達分科会を立ち上げています。これまで各事業やグループ企業ごとに行っていた調達業務に対し、分科会では、原料調達グループおよび主要グループ企業の調達責任者・サステナブル経営推進室・IR広報・各SBU・各品質保証部門をメンバーとして、グループ横断的な議論を定期的に行っています。分科会は2020年度~2022年度の累計で13回開催しました。
分科会では、以下の活動を行い、サステナブル経営委員会へ報告し、そこで審議・討議された内容を活動にフィードバックしています。
- グループ全体で取り組む持続可能な調達に関する目標設定と課題の進捗確認および情報交換
- 紛争鉱物・パーム油・人権問題への対応などの協議、および目標・実施計画の策定 など
サステナブル調達に向けた取り組み
新規サプライヤーの選定プロセス
当社グループでは、主要原燃料の購入における新規サプライヤー導入時には、2020年度よりCSR調達アセスメントを実施しています。
CSR調達アセスメントには、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン作成のセルフ・アセスメント質問表を参考に、当社が作成したSAQ(Self-Assessment-Questionnaire)であるCSR調査アセスメントシートを活用しています。品質保証・安定供給に関する項目の他、企業統治や人権・安全衛生・環境配慮・情報セキュリティなどの幅広い内容について確認し、その結果を当社グループの基準に沿って総合的に評価し、取引開始の可否を判断しています。
既存サプライヤーとのコミュニケーション
当社グループでは、主要原燃料・部品・機材の購入において、既存のサプライヤーに対して取引内容に応じた品質監査を実施しています。当社グループの基準を満たしていないサプライヤーやリスクが高いと判断されたサプライヤーに対しては、改善に向けた取り組みを実施しています。
主要原燃料・部品・機材の売買基本契約書にCSR条項を追加
当社グループの主要な原燃料・部品・機材を調達する組織である原料調達グループでは、2022年度より、売買基本契約書にて「ダイセルCSR調達基本方針」の遵守をサプライヤーへ求めるためのCSR条項を作成しました。CSR条項には、法令・社会規範の遵守をはじめ、幅広い項目が含まれています。原料調達グループが新規に締結・更新する全ての売買基本契約書に、このCSR条項を組み込むべく取り組みを進めています。
CSR調達アセスメントの実施
当社グループでは、サプライヤーのサステナビリティへの取り組み状況を把握するためにも、SAQ(CSR調達アセスメントシート)を活用したアセスメントを定期的に実施しています。環境・社会リスクの評価や、回答へのフィードバックを通じて、サプライヤーの意識向上を促し、ともに環境・社会リスクの低減に努めています。
例えば環境への配慮に関する項目では、サプライヤーの温室効果ガス削減の自主目標や取り組みの有無を確認・評価しています。
アセスメントの結果、当社グループの基準に満たないサプライヤーとは、面談を行い、課題を共有するとともに、改善に向けた取り組みを実施しています。
CSR調達アセスメントシート 主な評価項目
CSR調達アセスメントシート 主な評価項目
横にスクロールします。
評価項目 | 内容 |
---|---|
法令・社会規範の遵守 | 経営方針の制定、法令の遵守、内部通報制度の整備、贈答・接待の制限 |
人権尊重、及び労働環境 | 差別の禁止、強制労働の禁止、児童労働の禁止、非人道的な扱いの禁止、適切な賃金支払いおよび労働時間の適切な管理 |
安全衛生 | 職場の安全衛生、職場の衛生管理、業務上のけが・疾病、緊急時の対応 |
環境 | 環境汚染防止、エネルギーの有効活用、温室効果ガスの削減、廃棄物の削減、生物多様性保全の取り組み |
健全な事業経営 | 情報の開示、不適切な利益の排除、知的財産の尊重、反社会的勢力の排除 |
品質・安全性、及び技術の向上 | 製品・サービスの情報提供、製品・サービスの品質確保、化学物質の管理 |
安定供給と変化に対する柔軟な対応 | 安定供給、BCP対応 |
情報セキュリティ | コンピュータ・ネットワークの脅威に対する防御、個人情報の漏洩防止、顧客・第三者の機密情報の漏洩防止 |
地域・社会への貢献 | 国際社会・地域社会への貢献 |
CSRの推進とサプライチェーンへの展開 | 責任ある鉱物の調達、CSR活動の推進 |
回答の結果と改善に向けた取り組み
当社グループでは、2022年度末、主要サプライヤー768社(総調達額の85%以上)に、CSR調達アセスメントシートSAQへの回答を依頼し、678社から回答をいただきました(回答率88%)。
SAQ回答結果をもとに、要改善と判断される189社のうち、優先して取り組むべき対象として73社と面談を実施し、161件の課題を抽出しました。課題は安定供給やCSR推進に比較的多く見受けられましたが、2022年度に当該サプライヤーと共に改善に取り組み、82件を改善しました。
主要原燃料サプライヤーの課題状況

※平均点を記載
人権デュー・ディリジェンス
人権デュー・ディリジェンスの考え方に基づき、リスクマッピングを作成し、優先して取り組む分野を特定しました。その上で、2022年度、国内サプライヤー28社へのアセスメントを実施しました。2023年度は、各社との改善に向けた協議・支援を行っていきます。
また海外サプライヤーに対しても実施を計画・検討中です。
責任ある鉱物調達
コンゴ民主共和国およびその隣接国で採掘される鉱物から得られる利益が、深刻な人権侵害を行っている武装勢力や反政府組織の活動資金源となっています。特に、スズ・タンタル・タングステン・金(通称:3TG)については、2013年1月に施行された米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)第1502条で、米国証券取引所に上場している企業に対し、調達状況に関する調査・報告義務が課せられました。当社グループは、米国で上場しておらず報告義務はありませんが、人権侵害や環境破壊につながる調達はサプライチェーン全体を通じて容認しません。
当社グループはこのことを重要な課題と認識し、CSR調達アセスメントSAQシートとはまた別に、紛争鉱物に特化した調査を行っています。2022年度は、当社が購入した原材料や部品の内、3TGを含む原材料サプライヤー(全39社)をCMRT※1で調査し、問題視される事例がないことを確認しました(調査率100%)。また、コバルトを含む原材料サプライヤー(全24社)にもEMRT※2を用いた調査を実施し、問題視される事例がないことを確認しました(調査率100%)。これからも社会からの高まる期待に応えるべく、調査対象鉱物を順次拡大していきます。
- ※1Conflict Minerals Reporting Template. 使用する紛争鉱物の情報収集を、サプライチェーンを通じ円滑に行うための国際フォーマットです。
- ※2Extended Minerals Reporting Template. 対象鉱物を、CMRTからさらに広げたフォーマットです。2022年6月現在、コバルトおよび天然マイカが含まれています。
サステナブルなパーム油製品の調達
パーム油を採取するアブラヤシの大規模な農園開発が東南アジアで進み、熱帯雨林の減少や生態系への深刻な影響が社会問題となっています。当社グループは、パーム油に由来する化学品を原料として使用している企業の責務として、2018年8月よりRSPO※に加盟し、当該原料のRSPO認証品への切り替えを進めています。また、2019年には化粧品原料用途でRSPO認証製品の販売を開始し、順次製品ラインナップを拡充しています。2022年度末時点では、当社が購入したパーム油由来の化学品の約11%がRSPO認証品です。今後もサプライチェーンを通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
※Roundtable on Sustainable Palm Oil. 持続可能なパーム油の生産・利用を目指す、国際的な認証制度です。
化学品規制への取り組み
当社グループでは、国内のみならず欧州や米国、アジア大洋州など各国の化学品規制に対して、国内外法規検索データベースなどを活用しながら規制動向や改正情報を入手し、適切な法対応を実施しています。
特に、法規制面で世界をリードしている欧州REACH規則※への対応としては、製品に関する法登録を適切に進めるとともに、サプライチェーン管理を適切に実施しています。
※Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals. 欧州連合(EU)で定められた化学物質の登録・安全性評価・使⽤制限・使⽤許可を⽣産者および輸⼊者に義務付ける規則です。
BCP調達の実施
当社グループでは、主要な原燃料に関するBCP対策として、調達リスクやサプライチェーンへの影響を考慮し、優先順位の高いものから順に複数購買化や安全在庫の積み増しといった対策に取り組んでいます。2022年度末時点、主要な原燃料の48%で対策を完了し、残り52%についても対策を継続していきます。
調達に関するヘルプラインの活用
当社グループでは、「購買基本方針」に則った公平で公正な取引推進のため、お取引先様からのヘルプラインを設置しています。当社グループとの取引の中で、当社グループ側に法令違反や「購買基本方針」からの逸脱行為などがあった場合に、お取引先様からお知らせいただき、問題の解決を図ります。なお相談・通報により、相談・通報者様に不利益が生じることは一切ないことを明記しています。
社内教育の実施
当社では、2022年度、原燃料の購買部員を対象にエネルギー需給の長期見通し、バイオマス原燃料・産業廃棄物の有効活用、温暖化ガス排出量の管理、外部評価機関対応などについて、9回の勉強会を開催し、延べ84名が参加しました。また、各SBUやグループ企業の原燃料・資材購買部門などが参加する「調達分科会」においても、RSPO認証の課題や同業他社事例紹介などに関する勉強会を開催し、延べ45名が参加しました。さらに、購買部員全員の人事評価に、持続可能な調達に関する取り組み目標を落とし込むことで、各個人の自覚を持った行動に結び付けています。