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人と機械の成長

独自に開発したPCM(最適運転条件導出システム)APS(高度予知予測システム)の2つのAIアプリケーションを活用した 「 自律型生産システム 」は、そのまま実装すれば手放しでプラント運転が最適化されるわけではありません。AIに落とし込んだ 熟練オペレータ のノウハウなどから導き出す最適化と、生産現場の実績データとではギャップが生まれる場合があるからです。そのギャップを地道に検証し、人がこれまで気付けていなかった新たなノウハウや知見を抽出することが重要です。自分たちのモノづくりの弱い部分や、技術としてまだ確立できていなかった化学工学における原理原則上での反応ロジックの解明になるのです。

自律型生産システム構築のマイルストーン

PCM(最適運転条件導出システム)は、リアルタイムで品質の状況を予測できるため、品質とコストの両方を満たせる条件を“攻める”ことができるようになりました。化学プラントでの製造では、原料の品質が必ずしも均一ではないことが制御を難しくしています。例えば、酢酸セルロースの原料であるパルプは、天然物であることから温度や湿度の影響を受けやすく、使いこなすのが難しい原料とされています。従来では、安定的な生産を目指す上ではコストが多少高くなったとしても品質の安定を担保しておきたい、という心理になるものでした。

しかしPCM(最適運転条件導出システム)は、品質の状況が一目でわかるだけではなく、条件変更をしたときの品質も予測できるため、条件を調整することに抵抗がなくなります。これまでは安定的に生産できているなら、あえて危険を冒してまで条件を調整する必要を感じなかったところを、今では少しでも各指標が良くなるようにと、意思決定ができるようになりました。

APS(高度予知予測システム)の大きな効果は、異常を検知した際の対応時間を大幅に削減できることです。例えば、これまでは化学プラントの一部の機器の能力が低下した際には、現場にオペレータが駆け付けて状況を確認し、その後に対応策の検討に入る時間を必要としていました。化学プラントでは機器を止めると生産そのものを止めなくてはならないため、機器は止めずに、他の条件設定を調整することでリカバリーする手を探すことになります。しかし、その際には複雑に関係する各条件を元に判断を下さなければいけないため、検討には多くの時間を要していたのです。

APS(高度予知予測システム)では、機械の状態を連続的に監視しており、機械の能力低下が生じようとすれば、すぐにリカバリーのためには何をすればよいかを教えてくれます。これまでは事後の対応に追われていたものが、予防業務にシフトできるようになりました。

APS(変調原因の特定)とPCM(最適運転ポイントの導出)の成果

「自律型生産システム」では、AIのロジックをブラックボックス化しないことを目指して開発してきました。それを実現できた要素のひとつが、総合オペラビリティスタディをもとに作成したダイセル独自のロジックツリーです。この独自のロジックツリーでは、プラントで起きる変調に対して、その原因から影響への因果関係がツリー状に整理されています。例えて言えば、これまでは、一歩先、一歩手前の範囲で見ていたものを、五歩先、五歩手前に広げて理解できるようにしました。

自律型生産システムのロジックツリー

プラントの運転を最適化したり運転の変調を捉えたりするためには、複数の要因を考慮しなければなりません。オペレータには、どうしてその結果になったのかが、わかりにくいこともあります。そこで、独自のロジックツリー上に発生した現象を可視化することで、あたかも熟練オペレータの頭の中を見るように、因果関係の流れを理解できるようになるのです。

そして、新たなノウハウを速やかにAIに学習させて活用することで、機械が進化し、人はさらに高度なモノづくりを実現して成長していきます。「自律型生産システム」とは、人と機械が共に成長し続ける循環を生み出すシステムです。

AIが示す原理原則(因果関係のつながり)をこれまでの常識にとらわれずに客観的に見て理解することは、「こうすれば、もっと良くなるんじゃないか?」 「次はこんなやり方も試せるんじゃないか?」というアイデアを実行する後押しになります。酢酸セルロースの製造における原料使用率の最適化など、大きな改善にもつながっています。「自律型生産システム」の実装により、近い将来にはオペレータの仕事はもっと変わっていると私たちは考えています。

現在は人がモニタリングを行い、プラント運転の異常を検知していますが、これら異常検知のノウハウにおいてもAIを活用してきます。機械に任せられることをさらに増やしていけば、オペレータは人にしかできない創造的な仕事に時間をかけられるようになるはずです。市場のニーズが絶えず変化する中で、現場自らが考え、営業、調達・購買、物流の各部門や、お客様とともに連携して変化に対応し、ダイセルならではの付加価値を創造する現場を私たちは目指しています。「自律型生産システム」によって、オペレータが自分たちのアイデアをどんどん試す機会を増やしていくことで、ダイセルのモノづくりはもっと強くなっていきます。