プロジェクトストーリー

グローバルコンペティションの勝利を手にするのダ

Project Member
  • 松本 拓

    セイフティSBU
    モビリティBU
    マーケティング部

    松本 拓

    2017年入社 経済学部 経済学科卒

  • 本多 翔吾

    Daicel Safety Systems Americas,Inc.
     

    本多 翔吾

    2015年入社 外国語学部 地域文化学科卒

※所属・役職は取材時点のものです。

chapter 01 日本、北米、中国、タイ……。
国境をまたいだ受注プロジェクトが始動。

「では、今回のコンペティションの概要からご説明します」 アメリカ・デトロイトとつないだ電話会議のテーブル。松本は、やや緊張した面持ちで話し始めた。モニターには、デトロイト駐在員の本多の姿も映し出されている。
議題は、日系自動車メーカーのある車種向けのインフレータ受注プロジェクト。モデルチェンジにあたって、競合他社とのコンペティションに参加することになった。顧客はエアバッグを組み立てる外資系モジュールメーカーで、日本、北米、中国、タイにおけるグローバルな生産展開を前提としたコンペだ。ミッションはズバリ、競争力のある見積価格を提示して成約をつかみとることである。
設計とスケジュール面は日本国内担当である松本がグローバル展開も含めてハンドリングし、価格については日本、北米、中国、タイ各地の駐在員が現地顧客との交渉を担当。文字通り国境をまたいだ受注プロジェクトが始動した。
chapter 01
chapter 01

chapter 02 大きく変わった顧客の組織体制。
アプローチ先が見えない中での苦戦。

グローバルプロジェクトの取りまとめを任された松本。自身にとっては初めてとなるグローバル車向けのコンペとあって、気合いは十分だった。しかし、その意気込みをくじくようにスタートから壁が立ちはだかる。この顧客は、松本が前任から引き継いで間がないばかりか、同社内の組織体制が大きく変わったため担当者が不明確で、松本は極めて複雑な関係性の中での情報収集を余儀なくされた。
それでも持ち前の積極性で、松本は「油を売りに行かせてください」と技術者とともに顧客の担当者に日参。さらに他の担当設計者を次々と紹介してもらうことで詳細情報をヒアリングし、仕様やコストを詰めていった。そして社内でテレビ会議を開いてそれらの情報を共有し、地域ごとに見積価格や製品仕様に差がないよう調整を図った。
chapter 02

chapter 03 デトロイト着任早々の案件。
外国人相手のタフな交渉が続く。

一方、デトロイトに駐在員として勤務する本多は、顧客とインフレータの製造を担うアリゾナ工場との間で板挟みになりながら、価格・コスト交渉に奔走していた。当時は、デトロイトに着任してまだ数カ月。駐在員の仕事のイロハすら覚えていない状態で担当することになった大型案件だ。プレッシャーは相当なものだった。
着任早々で顧客との関係性も築けていない段階での交渉。それも外国人相手のタフな交渉とあって、本多は想像以上の苦戦を強いられた。それでも何とか信頼関係を築こうと、頻繁に顧客を訪問。たまたまアジア人だった顧客側担当者の母国語を勉強するなどして距離を詰め、最終的にはプライベートな話もできるほどの関係性を築くことに成功した。
chapter 03
chapter 03

chapter 04 当初の予定とは異なる機種で?
寝耳に水の出来事が襲う。

当初こそ難航したものの、うまく軌道に乗せられたと松本が思っていたところで、足元をすくわれるような出来事が起こった。顧客が、当初ダイセルが予定していたものとは異なる機種のインフレータを用いる前提で、自動車メーカーと話を進めていることが分かったのだ。まさに寝耳に水だった。告げられた機種のインフレータを供給する生産余力はダイセルにはなかった。こうなれば、仕様を満たす代替製品を提案するしかない……。松本は窮地に立たされた。
急きょ、設計部門に無理を言って別機種のカスタマイズ版となる試作品を作ってもらい、データとともに顧客に提供。エアバッグ本体に組み込んだ際の負荷などをテストしてもらった。顧客からさまざまな不具合リスクを指摘されては設計部門にデータの再提出を依頼し、顧客と再度交渉する日々。根気のいる仕事だったが、設計面を担う日本国内担当の自分がしっかりリードしなければ、グローバル受注は成し得ない。松本はそう自分に言い聞かせ、各方面と交渉を重ねた。そして最終的に、仕様、価格、スケジュールなど、あらゆる面で課題がないことを顧客と確認し、ついに成約にこぎ着けた。
chapter 04

chapter 05 本多の熱意が相手を動かす。
納期ギリギリのタイミングで契約締結。

北米市場での交渉にあたっていた本多も、価格交渉の最終局面を迎えていた。顧客の要求する価格を実現するには、徹底して原価を精査する必要がある。中でも、生産を担うアリゾナ工場とのコスト交渉は不可欠だ。着任当初は、まだ実績のない本多に対して「この新米駐在員に何ができるんだ?」と、お手並み拝見といった様子だったアリゾナ工場の担当者も、本多の熱意ある行動に触れて、次第に協力的になっていった。
アリゾナ工場の強力なバックアップを得た本多は、強気の姿勢を崩さず、顧客と粘り強く、そして論理的に交渉を繰り返した。そして、ようやく妥結。最終価格が記載された契約書にサインをもらうことができた。エンドユーザーである自動車メーカーが予定していた生産計画から逆算すると、まさにギリギリの日程での契約締結だった。
chapter 05
chapter 05

chapter 06 次なる目標に向けて
グローバルプロジェクトは続く。

受注は決まったものの、プロジェクトは生産プロセスという次の段階に入って今なお進行中だ。日本の松本、デトロイトの本多、ともにそれぞれの立場で多忙な日々を送っている。
松本はこのプロジェクトを通して、社内のさまざまな部署と連携をとり、チームで事を成し遂げるやりがいを実感することができたという。特に、旗振り役を担った松本にとっては、自身の調整やフォローの良し悪しが周囲に及ぼす影響の大きさを、身をもって学ぶことができた案件だった。
一方の本多は、駐在員の仕事の醍醐味を余すところなく感じられたという。駐在員にとっては、自分一人でできる仕事は少なく、社内外の各方面との間で何かと板挟みになることが多い。その中で、いかに周囲の理解と協力を得ることができるかが重要だと知った。それが達成できた今回の案件は、本多に大きな自信をもたらした。 次は、次世代インフレータ製品で新規案件を受注したいと意気込む松本。世界の大手自動車メーカーにおけるシェア拡大をもくろむ本多。2人は、すでに次の目標に向けて走り始めている。
chapter 06