保安防災

基本的な考え方

当社グループは「ダイセルグループ レスポンシブル・ケア基本方針」に則り「安全」を最重要基盤の一つに位置付け、アセスメントにより保安防災に関するリスクを特定し、リスクの回避や低減策など、予防措置を図ります。また、万が一保安事故が発生した場合に備えて、BCPガイドラインに基づき、被害を最小限に抑えるために必要な措置を講じます。

推進体制

レスポンシブル・ケア推進体制

保安防災への取り組み

当社グループは「火災・爆発・漏洩事故ゼロ」を目標に掲げ、日頃よりリスクアセスメントを実施し、危険源の特定とその対策を講じて、自主的な保安確保に取り組んでいます。また、当社グループ内で発生したトラブルについては、定期的に開催している安全環境責任者会議で、原因の掘り下げや対策の妥当性などを討議し、類似災害防止に取り組んでいます。

2024年度の事故発生状況(当社および国内グループ企業の事業場)

  • 小火 2件(対2023年度2件減)
  • 漏洩 7件(対2023年度2件増)

上記トラブルは、いずれも事業場内に留まり、操業に影響はありませんでした。全ての案件について原因を調査し、再発防止策をハード・ソフト両面から講じました。また、トラブルの内容・原因および再発防止策を他の全事業場に「災害・トラブルデータベース」で水平展開するとともに、類似案件の有無を調査し、類似トラブルが発生する可能性のある事案については、予防策を講じました。

リスクアセスメントの実施

当社グループは、最重要基盤としている「安全」を確保するため、総合アセスメント制度の「設備安全アセスメント」により、爆発、火災、危険物・有害物の漏洩などの危険性などの観点から、保安防災上のリスクの特定・評価・分析および対策を行っています。

2024年度の取り組み

生産・設備管理・安全環境の各部門および社内有識者で構成されるワーキンググループにより、2023年度に引き続き、熱分解反応や重合反応など、暴走反応リスクがある自己反応性物質について最新データや情報に基づきシミュレーションを行うなど、解析に取り組みました。また、リスクが懸念されるプラントにおいて、監視をより強化するための遠隔監視カメラの設置を完了し、事故に至る可能性がある場合、または事故が発生した場合に備え、遠隔防消火設備の設置を計画的に進めました。

環境、安全と健康の総合アセスメント制度

設備保全

当社では、製造設備の健全性を確保するため、全ての稼動設備で実施すべきメンテナンス周期・内容を基準化し、各事業場においてメンテナンスを滞りなく実施することにより、設備トラブルを未然に防止し、プラントの安全・安定運転の確保に努めています。また、日常点検における設備の不具合や変調を、TH(トラブル・変調)として抽出し、生産・設備管理・開発などの各部門で構成されるワーキングチームで原因と対策を検討し、改善を進めています。さらに、これらの知見を踏まえ、メンテナンス基準の見直しに反映しています。

メンテナンス道場

製造設備の健全性を確保するためには、設備管理部門の技術レベルの維持・向上が必要です。当社グループは、化学プラントのメンテナンス管理において、以前から様々な強化策を実施してきました。しかし、2007年頃から世代交代に伴う技術力や工事の管理監督・検収能力・トラブル解析能力の低下が原因と推察される事案が散見されるようになってきました。そこで、当社グループでは、メンテナンス技術・技能の伝承と、工事品質の向上を目的に、より実践的な実習教育を行う「メンテナンス道場」を開設しました。2015年度に機械系、2017年度には電気・計装系の各道場を開設しています。

メンテナンス道場の取り組み

化学プラントにおいて、安全と品質を確保するために不可欠なファクターが、日頃からの設備の維持管理です。それを実践するには、設備の状態を正確に把握・評価し、小さな異常の段階で適切な措置を講じる必要があります。

この重要業務を担うのが「人」です。

当社グループでは、安全と品質を支える「人」を育てる上で、従来の「知識」と「経験」を主体とした育成手法では不十分と考え、専門的な「技術」と「技能」を実践的に教育する場としてメンテナンス道場を開設しました。道場では「自社の設備は自らが責任を持って、かつ自信と誇りを持って維持管理する」ことができる人財を育成しています。

メンテナンス道場では、設備診断技術者のコアメンバーがSV(supervisor:講師)を務めます。SVは当社グループに必要なメンテナンス技術を体系化しながら、

  • 1.
    メンテナンス技術者を対象にした専門保全教育
  • 2.
    オペレータを対象にした自主保全教育
  • 3.
    協力会社作業者を対象にした技術指導

を実施しています。

カリキュラムは、機械系では「腐食・劣化損傷解析技術」「溶接管理技術」「非破壊検査技術」「シール技術」「潤滑管理技術」「振動診断技術」の6つの柱、電気・計装系では「施工/製作実習」「検収/チェック実習」「分解・整備/メンテナンス操作実習」「原因究明実習」の4つの柱で構成し、座学による知識教育に留まらず、実践的な実習教育を行っています。また修得した技術・技能を定期修理工事(SDM工事)でOJTとして実践することで、技術・技能の定着と向上を図っています。

受講者は、当社グループの社員だけでなく、メンテナンス実務に携わる協力会社の社員も対象としています。

機械系 教育カリキュラム(6つの柱):【腐食・劣化損傷解析技術】金属材料の諸性質/腐食、劣化及び各種損傷現象/金属組織観察、破面解析 等 【溶接管理技術】溶接欠陥の種類と発生原因/溶接作業(WPS確認、TIG溶接)/溶接(開先・余盛形状等)の計測 【非破壊検査技術】一般的な非破壊検査技術/非破壊検査:PT,MT,UT(肉側),RT/特殊な非破壊検査技術 【シール技術】配管フランジボルト締付け訓練/グランドシールの整備/メカニカルシールの整備 【潤滑管理技術】潤滑管理の基礎/潤滑油診断方法の種類と特徴/オイル・グリスの給油・給脂作業 【振動診断技術】機械要素の種類と特徴/ポンプ点検整備/簡易診断(五感点検、振動測定)/精密診断(振動、温度、他) → SDM工事での実践(OJT)
電気・計装系 教育カリキュラム(4つの柱):【施工/製作実習】電気計装工事、ソフトウェア製作に関わる過去トラブル事例の実物による実習・解説[電気・計装]電気計装工事における工具や測定器の使い方・基本動作・訓練の実施/ケーブル端末処理、チュービング工事、圧着端子処理の実習[システム]ソフトウェアにおける機能仕様書作成・コーディング・デバッグの実習 【検収/チェック実習】工事検収、ソフトウェアチェックに関わる過去トラブル事例の実物による実習・解説[電気・計装]電気計装工事検収チェックリストの検収基準の実物・具体例を用いた教育[システム]ソフトウェアのチェック(動作確認)の実習 【分解・整備/メンテナンス操作実習】機器・計器の分解/整備、ソフトウェアのメンテナンス操作/プログラムバグに関わる過去トラブル事例の実物による実習・解説[電気・計装]機器・計器の分解/整備における工具や測定器の使い方・基本動作・訓練の実施/機器・計器の分解/整備[システム]ソフトウェアのビルダ手順書を用いたメンテナンス操作、プログラム解析の実習【原因究明実習】メンテナンス道場に模擬的にトラブル発生状況をつくり、自らが調査し、考え、原因究明する訓練の実習・解説

配管フランジの締付け技量トレーニング

網干工場では2009年から、当社が独自に開発した装置を用いて、配管フランジ締付けの技量トレーニングを行っています。この装置は、フランジ締付け時のボルトの軸力とガスケットの締付け面圧がリアルタイムでパソコン画面に表示されるもので、技能を可視化できるシステムです(画像1)。同トレーニングは、技量認定制度導入の効果もあり、実際の配管フランジからの漏洩トラブル削減に大きな成果を上げています。2015年からはメンテナンス道場のカリキュラムにも組み入れ、当社グループの各工場をはじめ、協力会社にも展開しています(画像2)。

画像1 フランジボルティングシミュレーター(D-BOLVIS: Daicel Bolting Visualization)
画像2 シミュレーターによる科学的なフランジ締付けトレーニング

電気・計装/システムに対する施工/製作、検収/チェックのトレーニング

  • 電気計装工事における工具や測定器の使い方・基本動作・トレーニングの実施
  • ケーブル端末処理・チュービング工事・圧着端子処理の実習
  • ソフトウェアチェック・変換器カード交換の実習
画像3 施工/製作実習用のトレーニング装置
施工/製作実習用のトレーニング装置 [空気配管施工]ユニオンの種類:リングジョイント、フレアジョイント、スウェージロックの組み合わせ・ねじのサイズと種類・切断、曲げ方・ユニオン締付け要領・パイプの種類[伝送器取付施工]タマゴフランジの締付け・タマゴフランジの種類[計装機器結線施工]ケーブル端末処理、圧着・結線の締付けトルク・配線取り回し 端子ボックス内、機器への接続[電動機結線施工]テープ処理・解結線(解線前の確認、Y-∆)・アース線施工・回転方向[導圧配管施工]シールテープの巻き方・ユニオンの種類、スウェージロックの組み合わせ・ねじのサイズと種類・切断、曲げ方・ユニオン締付け要領・三岐弁の導圧配管の接続要領・パイプの種類[ケーブルグランド施工]コネクタの種類・ガスシールの構造理解・耐圧パッキンの構造、種類・ケーブル太さとの適合・アース配線・機器との組み合わせ認定・耐圧パッキン締付け要領[電気計装配線施工]電線管の取り回し・電線管の種類・ロックナット、プッシング取付け・フレキチューブの施工・配管サポート方法・配線取り回し(丸ボックス内)[盤結線施工]ねじの締付け・整線、盤内の仕舞
画像4 当社グループに必要な技術・技能を実践的に伝承

緊急時の対応

当社グループにおいて甚大な火災や爆発事故などが発生した場合、また地震・津波などによる大規模な自然災害が発生した場合には、「安全品質リスク管理規程」に基づき「緊急対策本部」が設置されます。

緊急対策本部は、イノベーション・パーク、大阪本社および東京本社の3拠点に置かれ、社長が本部長、レスポンシブル・ケア担当役員が副本部長となり、全体を統括します。

3拠点には、衛星携帯電話のアンテナ設備に加え2021年度から全事業場はもちろん、事業場外からもアクセス可能な災害情報共有システムを導入し、広域災害時における事業場間の情報通信環境を強化しました。また、国内全グループ企業には「安否確認システム」および「緊急通報システム」を導入しています。緊急時には「安否確認システム」で速やかに社員や家族の安否確認と被災状況を把握できます。「緊急通報システム」では被災状況の連絡や防災本部員の招集指示ができ、全社防災本部や事業場の防災本部の迅速・適切な設置や各本部の連携を図るなど、緊急時の対応強化につながります。設置された防災本部からは当社グループのウェブサイトを通じ、周辺地域への影響や人的・物的被害状況についても迅速に情報発信する仕組みも構築しています。

各事業場においては、地域の皆様をはじめとする社外への情報伝達手順を取り決めており、平時から近隣とのコミュニケーションの緊密化に努めています。さらに、一般社団法人日本化学工業協会が主催する地域の自治会や、関係行政機関、企業関係者が一堂に会する地域対話にも参加し、当社グループの環境保全、安全確保への取り組みなどを積極的に報告しています。

  • 地域の皆様が企業に抱いている疑問・不安あるいは期待などについて対話し、企業はより地域の皆様の期待に沿ったレスポンシブル・ケア活動を行い、信頼関係をさらに深めていく取り組みです。

緊急時対応体制

緊急時対応体制図:図全体は点線の枠で区切られており、上部の枠が「緊急対策本部」、下部の枠が「発災事業場」を表している。右上には凡例として、黄色の矢印に「対応指示」、緑色の矢印に「事案報告」と記載されている。緊急対策本部の最上部中央には「本部長」が配置されている。本部長とその下に配置された「副本部長」の間には、下向きに黄色の矢印、上向きに緑色の矢印が示されている。副本部長の下には横方向に指示系統が伸びており、左から「東京本社」「iPark」「大阪本社」の三つの拠点につながっている。「東京本社」の枠内には、「統括班」「総務支援班」「広報班」が配置されている。「iPark」の枠内には、「統括班」「サイト等支援班」「設備支援班」が配置されている。「大阪本社」の枠内には、「統括班」「サイト等支援班」「設備支援班」「総務支援班」「人事支援班」「広報班」が配置されている。これら三拠点の下方中央には「お客様対応班」が配置されている。図の下部にある発災事業場の枠内には、上から「防災本部」、その下に「現地対策本部」が配置されている。防災本部と現地対策本部の間には、下向きの黄色の矢印と上向きの緑色の矢印が示されている。全体として、黄色の矢印は対応指示の流れを、緑色の矢印は事案報告の流れを示している。

地震・津波・液状化対策

当社グループでは、地震・津波・液状化のリスク評価や設備の耐震診断・耐震補強を、計画的に進めています。耐震診断ならびに「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震改修促進法)に基づく補強を 2015 年度に完了し、現在、自主基準に基づいた耐震改修を進めています。

防災訓練

当社グループの各事業場では、事業場の全社員およびグループ企業社員を対象に、緊急事態時の人命確保や応急措置・被害拡大防止、関係省庁との連携などを迅速かつ適切に図るための防災訓練を、定期的に実施しています。

また、大規模広域災害を想定した全社災害対応訓練も、全社防災本部員を対象に毎年1回実施しています。訓練参加者には具体的な発災場所や発災内容が伏せられ、訓練開始とともに災害が進行・変化していくシナリオ非提示型で、初動訓練とBCP訓練を実施しています。

兵庫県石油コンビナートなど総合防災訓練(2019年度実施)
網干工場:地元消防署、近隣企業との合同防災訓練(2019年度実施)
網干工場:地元消防署との合同防災訓練(2024年度実施)