TCFD提言に沿った情報開示

基本的な考え方

2021年11月に当社グループはTCFD提言に賛同しました。TCFD提言に沿って気候変動に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標および目標」の各項目における情報開示に取り組みます。

  • Task Force on Climate-related Financial Disclosures. 気候関連財務情報開示タスクフォース
参画するイニシアティブ・外部からの評価

ガバナンス

気候変動への対応は、経営レベルで議論を行っています。2024年度に3回開催したサステナブル経営委員会では、主に気候変動への対応として、循環型社会構築への貢献認定制度(制度名:CycloVia)の導入、GHG排出量削減の取り組み、インターナルカーボンプライシング制度の導入などについて討議し、その内容を取締役会で報告しました。

サステナビリティマネジメント

戦略

ダイセルグループは、気候関連リスクおよび機会を踏まえた戦略や組織のレジリエンスについて検討するため、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動シナリオを参照して以下の手順にてシナリオ分析を実施し、2030年時点での影響を考察しました。

シナリオ分析実施手順

シナリオ分析は以下の手順で実施しています。

1 シナリオ分析の対象範囲の設定、2 各事業における気候変動に対するリスクと機会のリスト化、3 各事業における外部シナリオに従って、事業シナリオを作成し、リスクと機会の大きさを評価、4 各事業における財務影響評価、5 気候変動が当社グループの主要事業に及ぼす影響とその対策のまとめ

シナリオ分析条件と概要

①シナリオ分析対象

当社グループの主要事業領域として、以下の事業を評価対象としました。

  • エンジニアリングプラスチック事業(ポリプラスチックス)
  • 酢酸セルロースを中心としたアセチル事業(マテリアルSBU)
  • セイフティ事業(セイフティSBU)
②時間軸
2030年時点での移行リスク、物理リスク、移行機会を検討しました。
③想定するシナリオ
IPCCやIEA等の情報をもとに、「脱炭素化が進んだシナリオ(1.5℃/2℃シナリオ)」と「脱炭素化が進まないシナリオ(4℃シナリオ)」の2つのシナリオを想定し、それぞれリスクおよび機会を検討しました。
4℃シナリオと1.5℃/2℃シナリオの2030年時点での気温の上昇はいずれも1.5℃程度で大きな差はないことから、2030年時点での物理リスクは1.5℃シナリオ(一部、2℃未満シナリオ)、4℃シナリオともに同程度と想定されます。このため、物理リスクについては、2つのシナリオそれぞれについて区別せず、2030年時点では同じ状況であると予測しました。

シナリオ概要

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1.5℃/2℃ 4℃
社会の変化
  • 今世紀末の平均気温上昇を1.5/2℃未満に抑えるため、大胆な法規制の施行、技術革新が進められる
  • 全世界で脱炭素社会実現に向けた取り組みが実施され、環境性能(低環境負荷)がQCDと並ぶ顧客提供価値となっている
  • 化学産業においては、脱炭素社会に適応できない企業・事業は淘汰され、統廃合が進むことで原燃料調達リスクが増える
  • 環境政策へのコンプライアンス違反への社会の目が厳しくなる(顧客からの取引停止条件となっている)
  • 再生可能エネルギー比率が高まることによって、電力供給が不安定化する
  • 欧州を中心とした大胆な法規制を早期施行する地域と新興国を中心とした経済成長を重視し、厳しい規制の導入が遅れる地域とで分断され、結果的にGHG排出削減が進まない
  • 環境性能(低環境負荷)を評価する顧客が限定される
  • 化石燃料・化学産業においては積極的な投資が行われず、設備老朽化を機に統廃合が進むことで原燃料調達リスクが増える
  • 環境政策へのコンプライアンス違反への社会の目が厳しくなる(一部顧客からの取引停止条件となっている)
  • 一部地域では再生可能エネルギー比率が高まることによって、電力供給が不安定化する
技術革新
  • CCUや資源循環(サーキュラーエコノミー)に関する技術が盛んに開発され、2030年に実用化されている
  • 省エネ技術や省CO2技術への投資が盛んになり、技術取得有無がコスト競争力に直結する
  • エネルギー価格上昇により、省エネ技術への投資が盛んになり、技術取得有無がコスト競争力に直結する
気候の変化
  • 台風・洪水などの災害の規模が拡大する
  • 異常気象として、高温化が進む
  • 台風・洪水などの災害の規模が拡大する
  • 異常気象として、高温化が進む
  • Carbon dioxide Capture and Utilization…二酸化炭素回収および有効利用

シナリオ分析の実施結果リスクと機会

分析を行った事業における気候変動に対するリスクと機会、その影響度および対策案は下表の通りです。

(影響度)● ● ●:百億円以上、● ●:数十億円、●:十億円以下、-:ほとんど影響なし
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リスク機会 カテゴリ 内容 全体 エンプラ事業 アセチル事業 セイフティ事業 対応
4℃ 1.5/2℃ 4℃ 1.5/2℃ 4℃ 1.5/2℃ 4℃ 1.5/2℃
移行リスク 政策・法規制 炭素価格(税)の導入・強化により、操業コストが上昇 数十億円 百億円以上 数十億円 百億円以上 十億円以下 百億円以上 十億円以下 百億円以上 GHG排出量削減目標(2018年度比総量50%減)実現に向けた活動推進
ICP導入によるリスクの定量化
炭素価格(税)の導入・強化により、上流取引先のコスト増が価格転嫁され、調達コストが上昇 数十億円 百億円以上 数十億円 百億円以上 十億円以下 百億円以上 十億円以下 百億円以上 サプライヤーと協働でGHG排出原単位削減を推進することで影響を低減
低GHG原材料への切り替え
欧州炭素国境調整措置等、各国の炭素排出目標・政策による温室効果ガス排出の規制強化 数十億円 十億円以下 数十億円 十億円以下 ほとんど影響なし 十億円以下 GHG排出量削減目標(2018年度比総量50%減)実現に向けた活動推進
省エネ、低GHG原材料への切り替え、調達先を変更
市場 低炭素社会実現に向け、石化由来原材料等の価格変動 百億円以上 数十億円 十億円以下 百億円以上 十億円以下 在庫管理の最適化
複数購買化、処方による原料シンプル化、製造技術向上による品質均一化の推進
技術 省エネ、生産性向上のための設備投資コストの増加 数十億円 数十億円 数十億円 ほとんど影響なし 処方設計・テクニカルサービスの技術・ノウハウ開発を加速することでリスクを解決
評判 気候変動に対するリスク・機会の特定とその対応、環境経営に関する情報開示要求の高まり 十億円以下 十億円以下 ほとんど影響なし ほとんど影響なし 環境対応に関する体制・仕組み強化
変化する社会の要求に合わせた環境関連の情報開示を継続
物理リスク 慢性/急性 異常気象による災害の激甚化(豪雨、洪水、台風)による、操業停止や原材料、製品の損傷
サプライチェーンの停止
十億円以下 十億円以下 十億円以下 十億円以下 気候変動に対するBCP強化
慢性 平均気温の上昇による、労働条件の悪化や感染症蔓延 ほとんど影響なし ほとんど影響なし ほとんど影響なし ほとんど影響なし 継続的な職場環境の改善
移行機会 市場 環境配慮型製品等新規市場拡大
(生分解性プラスチック、EV、再エネ、リサイクル、水資源保護)
百億円以上 数十億円 百億円以上 数十億円 リサイクルビジネス(リコンパウンディング事業)の開発
低GHG製品の開発(CCU技術活用、バイオ原料製品開発)
酢酸セルロース機能化、新規ファインセルロース開発、BIC※1案件事業化
EV向け電流遮断装置の市場開拓
CycloVia※2の運用
資源の効率性 省エネ、生産性向上による操業コストの削減 百億円以上 百億円以上 百億円以上 十億円以下 ダイセル独自の生産革新手法、自律型生産システム導入
その他低減活動※3 数十億円 百億円以上 数十億円 百億円以上 十億円以下 百億円以上 十億円以下 数十億円
  • ※1
    バイオマスイノベーションセンター:バイオマス資源の原料化に取り組む当社部門
  • ※2
    CycloVia:社内認定制度である「循環型社会構築への貢献認定制度」の制度名
  • ※3
    その他低減活動:GHG排出量50%削減(スコープ1、2)のための投資、GHG排出量削減による炭素価格の影響を低減、低GHG原材料への転換、サプライチェーン全体の低減活動など
シナリオ分析の実施結果[PDF:1.9MB] PDFファイルをダウンロードする

リスク管理

気候変動は、サステナブルな経営における重要なリスクと捉え、当社グループのリスク管理体制の下、リスク評価、対応とその実施状況の確認を行います。重大な課題に対しては、サステナブル経営委員会にて詳細な検討を行います。

リスク管理

指標および目標

当社グループでは、マテリアリティ15項目の中に、「気候変動への対応」「環境に貢献する素材や技術の提供」「循環型社会構築への貢献」を挙げており、それぞれKPIを設定しています。「気候変動への対応」においては、「2050年カーボンニュートラル」の達成に向け、GHG排出量削減目標を達成するため、省エネルギー対策をさらに発展させていきます。また、2025年1月に社内認定制度である「循環型社会構築への貢献認定制度(制度名:CycloVia)」を導入し、さらに、2025年4月にインターナルカーボンプライシング制度も導入しました。これらの制度をリスクと機会の指標として活用するなどにより、新たな仕組みを構築していきます。

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マテリアリティ 指標 目標 実績(2024年度) 備考
気候変動への対応 当社グループのGHG排出量削減率※1 スコープ1、2
2030年度:50%削減(2018年度比)
0.5%削減
  • ※1
    2050年 カーボンニュートラル実現(スコープ1、2、3)
環境に貢献する素材や技術の提供 製品に含まれる循環型原料※2の使用率 2030年度:30%以上 16.5%
  • ※2
    バイオマス原料、大気中CO2の利用、廃棄物の再使用、リサイクル
    対象はダイセル、ポリプラスチックス、ダイセルミライズの主要樹脂材料
循環型社会構築への貢献 天然素材を利用した資源循環システムの対外的な提案数 2025年度:3件 1件
マテリアリティ

当社グループは、サステナブル経営方針の中に地球環境と共生する循環型プロセスの構築を掲げています。引き続き低炭素経済に貢献する製品やサービスについて議論を重ね、より良い指標と目標の設定を検討していきます。