気候変動への対応

基本的な考え方

当社グループは「ダイセルグループ レスポンシブル・ケア基本方針」に則り、脱炭素社会の実現に向けて温室効果ガス(GHG)排出量削減の中長期目標を設定しています。生産プロセスの抜本的な見直しや新技術の導入により、エネルギー使用量を大幅に削減するとともに、燃料の転換や使用量の最適化、再生可能エネルギーの導入などに努め、また、バイオマス原料やリサイクル原料の活用を通じて、当社グループ全体でGHG排出量の削減に取り組みます。

ダイセルグループのGHG排出量削減目標

SCIENCE BASED TARGETS DRIVING AMBITIOUS CORPORATE CLIMATE ACTION

当社グループのGHG排出量削減目標がSBTイニシアチブ※1より認定されました。

ダイセルグループの温室効果ガス排出量削減目標

短期目標

  • 2030年度までに、スコープ1およびスコープ2の温室効果ガス排出量を2018年度比で50%削減する。
  • 2030年度までに、スコープ3※2(原材料等の調達、燃料・エネルギー調達、物流)の温室効果ガス排出量を2018年度比で30%削減する。

ネットゼロ目標

  • 2050年度までに、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量をネットゼロにする(スコープ1・スコープ2・スコープ3の温室効果ガス排出量を2018年度比で90%削減。残余排出量は中和化※3)。
  • ※1
    パリ協定が合意した「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回り、また1.5℃に抑える水準」と整合した、企業の中長期的な温室効果ガス削減目標を目指す国際的なイニシアチブ
  • ※2
    カテゴリ1・3・4の合計排出量で30%削減することを目標としています。
    カテゴリ1
    購入した原材料、部品、製品、サービスなどの製造に伴う温室効果ガス排出
    カテゴリ3
    購入した燃料や電力などの、採掘・精製・発電など上流工程における温室効果ガス排出
    カテゴリ4
    原材料や製品の調達に伴う、輸送および保管(上流物流)における温室効果ガス排出
  • ※3
    1.5℃排出経路に沿った削減取り組みでも、なお削減しきれない排出量(残余排出量)を、バリューチェーンの外で森林由来吸収や炭素除去技術などを活用して「中和(Neutralization)」すること。

カーボンニュートラルの実現に向け、2021年に中期目標として「2030年GHG排出量50%削減(2018年度基準)」を策定しました。

2026年4月には、これまでの目標をアップデートした当社グループのGHG排出量削減目標が、SBTイニシアチブにより認定されました。

今後も当社グループは、バリューチェーン全体を視野に入れたGHG排出量削減の取り組みを推進するとともに、気候変動への対応と事業成長の両立を図り、社会から信頼される企業グループを目指してまいります。

GHG排出量削減推進体制

2023年7月、カーボンニュートラルの取り組みをさらに加速するため、「エネルギー戦略委員会」を「カーボンニュートラル戦略委員会」へ改称しました。

当委員会は社長直轄の委員会であり、生産本部の担当役員(生産本部長)を委員長とし、国内の生産部門・エネルギー供給部門・その他コーポレート部門の代表者で構成しています。委員会が中心となり、グループ全体の省エネルギー推進・管理を行うとともに、GHG排出量削減目標達成に向けて、1.現行生産プロセスにおけるGHG排出量削減、2.革新的技術によるGHG排出量削減、3.エネルギー供給部門によるGHG排出量削減の3つの切り口で、地球環境と共生する循環型プロセス構築を当社グループ全体で推進していきます。

また、中長期目標達成に向けた適切な投資計画を立案・遂行するため、2025年4月にインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入しました。

今後は、2026年度から開始した排出量取引制度に対応すると共に、GX フューチャー・コンソーシアム別ウィンドウで開く、GX フューチャー・リーグ別ウィンドウで開くに参画し、削減施策、投資判断を一体的に推進することで、GHG排出量削減の取り組みを一層強化していきます。

カーボンニュートラル戦略委員会体制図

社長を最上位とし、その下にカーボンニュートラル戦略委員会(委員長:生産本部長)3つの切り口[現行生産プロセスにおけるGHG排出量削減 | 実行体制[自律型生産システム実装タスクフォース(人工知能(AI)活用、最適運転、高度予知予測) / 工場省エネアクションチーム(共通の切り口によるGHG排出量削減アイテムの横展開)]・革新的技術によるGHG排出量削減 | 実行体制[マイクロ流体デバイスプラント推進プロジェクト(究極の生産効率を追求したプラント小型化) / 生産技術本部工場・サイト(プロセス革新技術の開発・実証・横展開)]・エネルギー供給部門によるGHG排出量削減 | 実行体制[エネルギー会議(エネルギー施策全般、エネルギー設備のダウンサイジング、エネルギー燃料転換、最適運用の追求)]]
インターナルカーボンプライシング(ICP)制度の導入について

GHG排出量削減の取り組み

当社グループのGHG排出量の削減

当社グループの2025年度のGHG排出量 (スコープ1・スコープ2) は、2024年度から17万トン-CO2e減少し、214万トン-CO2e(2024年度比7.4%減)となりました。 内訳は、当社事業場のGHG排出量が145万トン-CO2e(2024年度比5.2%減)、国内グループ企業のGHG排出量が14万トン-CO2e(2024年度比28.2%減)海外グループ企業は54万トン-CO2e(2024年度比6.4%減)でした。
報告内容に対する信頼性確保のため、当社事業場のGHG排出量 (スコープ1・スコープ2) の算定に関し、定期的に第三者保証※を取得しています。
また、GHG排出量に大きく関わる2025年度の当社グループのエネルギー使用量については、原油換算で2024年度と同等の831千kLとなりました。

なお、2023年度には、サステナブル経営委員会内の課題別分科会としてLCA(ライフサイクルアセスメント)分科会を立ち上げました。LCA手法を活用して、製品別CFP(カーボンフットプリント)を算定し、CFP削減の検討を行っています。環境負荷を定量的にミエル化することで、既存製品の環境負荷低減や新たな環境対応型素材などの製品開発につなげています。

  • ※
    スコープ3についても定期的に第三者保証を取得していますが、カテゴリごとに集計範囲が異なります。
ESGデータ集 p. 1 気候変動への対応

エネルギー使用量

左軸はエネルギー使用量(当社事業場と国内グループ企業・海外グループ企業、単位は千キロリットル)で棒グラフ。右軸は5年間エネルギー平均消費原単位指数(当社事業場、単位はパーセント)で折れ線グラフ。2009年度(基準年)はエネルギー使用量の当社事業場と国内グループ企業が410、2020年度はエネルギー使用量の当社事業場と国内グループ企業が477・海外グループ企業が212で合計689・5年間エネルギー平均消費原単位指数が97.2、2021年度はエネルギー使用量の当社事業場と国内グループ企業が483・海外グループ企業が242で合計725・5年間エネルギー平均消費原単位指数が100.5、2022年度はエネルギー使用量の当社事業場と国内グループ企業が478・海外グループ企業が229で合計707・5年間エネルギー平均消費原単位指数が100、2023年度はエネルギー使用量の当社事業場と国内グループ企業が630・海外グループ企業が209で合計839・5年間エネルギー平均消費原単位指数が99.1、2024年度はエネルギー使用量の当社事業場と国内グループ企業が624・海外グループ企業が215で合計839・5年間エネルギー平均消費原単位指数が101.4、2025年度はエネルギー使用量の当社事業場と国内グループ企業が592・海外グループ企業が240で合計831・5年間エネルギー平均消費原単位指数が101.2。
  • ※1
    2022年度までは化石燃料のみでしたが、2023年度以降は、省エネ法改正により非化石燃料を追加しています(原油換算実施)。
  • ※2
    換算生産数量あたりのエネルギー消費量が5年間で平均してどれだけ改善したのかを示す指標(100%未満:改善、100%超:悪化)

GHG(スコープ1・2)排出量※

単位は万トンシーオーツーイー。2018年度(基準年)は当社事業場(本社を含む)が161・国内グループ企業が21・海外グループ企業が50で合計232、2021年度は当社事業場(本社を含む)が161・国内グループ企業が18・海外グループ企業が56で合計235、2022年度は当社事業場(本社を含む)が159・国内グループ企業が18・海外グループ企業が57で合計234、2023年度は当社事業場(本社を含む)が155・国内グループ企業が15・海外グループ企業が56で合計227、2024年度は当社事業場(本社を含む)が153・国内グループ企業が20・海外グループ企業が58で合計231、2025年度は当社事業場(本社を含む)が145・国内グループ企業が14・海外グループ企業が54で合計214。
  • ※
    2025年度実績までは、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下、温対法)に基づいて算定しております。SBT認定取得に伴い、2026年度実績値より、GHGプロトコル基準で公開する予定です。

サプライチェーンを通じたGHG排出量の削減

SBT認定取得に伴い、2026年度実績値より、GHGプロトコル基準で算定範囲をスコープ3全体に、また集計範囲をグループ全体に広げたGHG排出量を公開する予定です。

2025年度スコープ別GHG排出量

横にスクロール可能です
カテゴリ 排出量(万t-CO2e)
スコープ1※1 事業活動からの直接的な温室効果ガス排出 145
スコープ2※1 事業活動でのエネルギー使用による間接的な温室効果ガス排出 1
スコープ1・2※1合計 145
スコープ3 事業活動範囲外での間接的な温室効果ガス排出 125
カテゴリ1※2 購入した物品・サービス 92
カテゴリ2※3 資本財 21
カテゴリ3※2 スコープ1・2に含まれないエネルギー関連活動 10
カテゴリ4※2 輸送・流通(上流) 2
カテゴリ5※2 事業から発生する廃棄物 1
カテゴリ6※4 出張 1
カテゴリ7※4 雇用者の通勤 0
スコープ1・2・3合計 271
  • ※1
    対象範囲:当社事業場(本社含む)
  • ※2
    対象範囲:当社事業場
  • ※3
    対象範囲:当社グループ
  • ※4
    対象範囲:当社事業場および国内グループ企業
ESGデータ集 p. 1 気候変動への対応
GHG排出量271万トンシーオーツーイー。スコープ1は145(53.5パーセント)、スコープ2は1(0.2パーセント)、カテゴリ1:購入した物品・サービスは92(33.8パーセント)、カテゴリ2:資本財は21(7.6パーセント)、カテゴリ3:スコープ1・2に含まれないエネルギー関連活動は10(3.5パーセント)、カテゴリ4:輸送・流通(上流)は2(0.6パーセント)、カテゴリ5:事業から発生する廃棄物は1(0.3パーセント)、カテゴリ6:出張は1(0.4パーセント)、カテゴリ7:雇用者の通勤は0(0.1パーセント)。

算定方法

環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン Ver2.8」に基づき、同「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver3.6」、ライフサイクルインベントリデータベース「AIST-IDEA」、温対法算定・報告・公表制度における排出係数などを使用しました。

物流における環境負荷低減

当社グループは、モーダルシフト※1やコンテナのラウンドユース※2など、製品輸送における省エネルギーに取り組んでいます。当社の2025年度の物流におけるエネルギー使用量は2024年度比9.7%増の5.4千kLとなりました。

  • ※1
    トラックによる貨物輸送を、環境負荷が少ない船舶などの海運、または鉄道輸送に転換すること。
  • ※2
    輸入時に使用したコンテナを、輸出時にも再利用すること。

エネルギー使用量/エネルギー使用量原単位(当社事業場)

左軸(船舶・鉄道・陸上、単位は原油換算 千キロリットル)は棒グラフ。右軸(原単位、単位はキロリットル/百万トンキロ)は折れ線グラフ。2021年度は船舶が1.9・鉄道が0.2・陸上が3.4で合計5.6・原単位が23.1、2022年度は船舶が1.9・鉄道が0.2・陸上が3.2で合計5.3・原単位が22.9、2023年度は船舶が1.8・鉄道が0.2・陸上が3.3で合計5.3・原単位が23.0、2024年度は船舶が1.4・鉄道が0.2・陸上が3.4で合計4.9・原単位が24.4、2025年度は船舶が0.5・鉄道が0.1・陸上が4.8で合計5.4・原単位が20.7。

CO2排出量/CO2排出量原単位(当社事業場)

左軸(船舶・鉄道・陸上、単位は千トンシーオーツー)は棒グラフ。右軸(原単位、単位はトンシーオーツー/百万トンキロ)は折れ線グラフ。2021年度は船舶が5.3・鉄道が0.4・陸上9.1で合計14.8・原単位が61.0、2022年度は船舶が5.2・鉄道が0.3・陸上が8.6で合計14.1・原単位が58.3、2023年度は船舶が4.9・鉄道が0.3・陸上が8.7で合計13.9・原単位が60.9、2024年度は船舶が3.7・鉄道が0.3・陸上が9.0で合計13.0・原単位が64.6、2025年度は船舶が5.5・鉄道が0.3・陸上が10.6で合計が16.4・原単位が62.8。

モーダルシフトなどによるCO2排出量削減

ダイセル物流株式会社(以下、ダイセル物流)は、物流時に発生するCO2を削減するため2007年から輸出入品の主要港と工場間の物流を陸上輸送から海上輸送に変更しています。また輸出港を工場近隣港に変更することで輸送距離を削減、CO2排出量を抑制しています。2025年度は年間約6,600本のコンテナ※を海上輸送とするモーダルシフトなどにより、CO2排出量を陸上輸送時の74%に削減しました。

  • ※
    40フィートコンテナ換算

コンテナのラウンドユース率の向上

輸入時に用いたコンテナを輸出時に再利用することで、空コンテナの輸送に伴うCO2排出を抑えられます。ダイセル物流は、コンテナを用いた輸出入にラウンドユースを導入し、さらなるCO2排出削減に取り組んでいます。また、船社別のスムーズなマッチングを可能にする独自開発のシステムによる円滑で効率的な輸送も、省エネルギーに寄与しています。その他コンテナ使用基準の見直しや簡易な修繕なども随時実施し、安全で効率的な輸送に努めています。

ダイセル物流株式会社 環境負荷低減の取り組み 別ウィンドウで開く

3つの切り口によるGHG排出量削減

当社グループは、気候変動への対応として「現行生産プロセス」「革新的技術」「エネルギー供給部門」の3つの切り口でGHG排出量を削減し、地球環境と共生する循環型プロセスの構築に取り組んでいます。

現行生産プロセスにおけるGHG排出量削減

当社のエネルギー使用量の90%を占める姫路製造所、大竹工場を、サイバー空間であたかも一つの工場と見なし(バーチャルファクトリー※化)、最適な生産計画やエネルギー需給を実現し、省エネルギー化しています。また「ダイセル式生産革新手法」に基づき構築した「知的統合生産システム」を東京大学との共同研究により開発した人工知能(AI)で高度化した「自律型生産システム」により、品質、コスト、環境を同時に考慮した最適運転を実現しています。これまでに、アセチルチェーンの主要プラントへと展開してきました。

2025年度には、過酢酸誘導体を起点に複数の有機合成品プラントへの実装を進め、順次拡大しています。2030年度までの中期計画期間中に全社の主要プラントへ展開を進め、GHG排出量削減を図っていきます。

  • ※
    コンピュータ内の仮想空間に“あたかも実物があるように”創りあげた工場モデル
ダイセル式生産革新 別ウィンドウで開く

「エネルギー運転最適化システム」の導入

最適な生産計画に基づいたエネルギー管理をするために、実際の運転条件とシミュレーションによる最も好ましい運転条件をオンラインで監視し、コントロールする「エネルギー運転最適化システム」を姫路製造所、大竹工場で運用しています。

電力自己託送の活用

エネルギー需給最適化の一環として、電力自己託送を活用しています。大竹工場で自家発電した内の余剰電力を西日本の各拠点に供給してきましたが、さらに、2020年5月に東日本の新井工場へ、2021年4月に富士工場、2026年4月にダイセルビヨンド株式会社亀岡工場へ供給を開始しています。引き続き、グループ企業へのさらなる展開を検討し、グループ全体での「購入電力ゼロ」体制を目指します。

電力自己託送
バーチャルファクトリー[大竹工場・姫路製造所] 主力製品、酢酸セルロースを製造(2工場の異なるエネルギー設備の違いを考慮し、必要生産量を基に、エネルギー・在庫・物流などを考慮した最適な生産計画やエネルギー運転条件をシミュレーションできる仕組みを構築) バーチャルファクトリーから西日本(播磨工場、神崎工場、イノベーション・パーク、ダイセルビヨンド亀岡工場)・東日本(新井工場、富士工場、富士研究開発本部)に対して電力自己託送。東日本(グループ企業)に対してさらなるグループ企業への展開を検討。

革新的技術によるGHG排出量削減

当社グループは、既存技術の改善や改良による省エネルギー対策だけでなく、生産プロセスの抜本的見直しや新技術の開発によるGHG排出量削減にも取り組んでいます。当社における2025年度の環境負荷低減の研究開発活動コストは1,037百万円です。

化学産業では、一般的にエネルギーの約40%が蒸留プロセスで消費されるといわれています。当社も例外ではなく、蒸留プロセスにおける省エネルギー技術の確立が大幅な省エネルギー達成のポイントになります。蒸留プロセスは高温の熱エネルギーを用いる一方、発生する多量の低温排熱を再利用せずに捨てています。つまり、高温の熱エネルギー使用量を削減する技術に加え、低温排熱エネルギーを有効に利用・回収する技術の開発が、省エネルギーの重要なポイントとなります。

当社グループは「革新的省エネプロジェクト」を立ち上げて全社横断的に活動を進めてきた結果、改良型ペトリューク技術や蒸気再圧縮(VRC)技術といった蒸留塔の省エネルギー技術を開発しました。これらの基礎技術は以前から知られていましたが、大型化学プラントで実用化されておらず、世界初の実証となります。

さらに、カーボンニュートラルの鍵となる新バイオマスプロダクトツリー構築のため、複数の大学との共同研究によって穏和な条件(=低エネルギー)で木材を溶かす技術の確立を進めています。また、製造プロセスにおいて、CO2排出の抑制策に取り組むとともに、なお大気中に放出されるCO2のさらなる削減を目指し、当社ではナノダイヤを用いてCO2をCOへ還元し再利用する技術の開発を進めています。

既存技術の改良

改良型ペトリューク技術

ペトリューク蒸留は省エネルギー技術として広く知られており、内部分割型蒸留塔(DWC)として実用化されています。しかし、DWCを導入するには既存の蒸留塔をリニューアルする必要があり、多大な設備投資が必須となります。当社は、ペトリューク蒸留を改良し、既存の蒸留塔を改装することで適用可能な新規プロセス技術を開発しました。2014年から、新井工場の無水酢酸の製造設備へ適用しており、カーボンニュートラルに向けてさらなる横展開を検討しています。

蒸気再圧縮(VRC※)技術

VRC技術は低温の蒸気が持つ排熱を圧縮し、高温の蒸気にして熱を回収する低温排熱回収技術として、普遍的な活用が期待されています。以前から、水系の単蒸留プロセスなどには広く用いられていますが、有機溶剤系の蒸留プロセスに用いられた例はありませんでした。当社は、圧縮機メーカーと共にプロセスへ適用可能な圧縮機の導入を進めており、既に実証設備での試運転を完了しました。現在、長期運転による検証を継続しており、他設備への横展開を検討中です。

  • ※
    Vapor Recompression
VRC技術[蒸留塔の中に、圧縮機(ガス圧縮により高温化)と熱交換器が配置。] 経済産業省 先端設備等投資促進補助事業、改良型ペトリューク技術[反応液から低沸・製品・高沸] VRC技術と改良型ペトリューク技術により、30パーセント以上の省エネ。

環境変化に対応した新技術

膜分離技術

蒸留工程で多大なエネルギーを要する蒸発操作を膜分離技術に置き換え、大幅なエネルギー削減を目指しています。産学連携で膜分離技術の開発を進めており、網干工場で実証実験中です。

新たな反応技術

網干工場1,3-BGプラントに、新触媒による新たな反応技術を取り入れた新開発のプロセス革新技術を導入しました。これによりエネルギー消費量を約20%削減(対現行技術)しています。

超臨界流体による洗浄・抽出技術

二酸化炭素は一定の高温・高圧条件にすることで超臨界状態となり、有機溶媒のような溶解性とガスの拡散性を持つことが知られています。この特性を生かして既存の生産設備に超臨界二酸化炭素を適用することで、有機溶媒の不使用やその回収設備における蒸気投入量の削減が期待でき、検証実験に取り組んでいます。

新規排水処理技術(高効率型好気性排水処理技術)

高効率型好気性排水処理技術は、酸素移動効率を大幅に高めることで従来の活性汚泥法に比べてエネルギー消費を抑えつつ、高負荷条件での処理を可能とする技術です。設備の小型化やBOD処理量あたりの電力削減が期待できることから、工場での実証試験を計画しています。

マイクロ流体デバイスによる適量生産技術

マイクロ流体デバイスは、微細な流路内で混合・反応・精製などの化学操作をマイクロスケールで行うための装置です。マイクロ流体デバイスを1万枚以上並列化することにより、研究領域で確立された製法のまま大量生産できると同時に、省スペース・省エネルギー・省資源かつ必要なものを必要な量だけ生産できる、サステナブルな次世代生産プラントの実現につながります。2025年度末にレジストポリマー製造の実証設備を導入し、2026年度から試験生産を開始します。

エネルギー供給部門によるGHG排出量削減

当社グループの各工場では、製造に必要な蒸気・電力を工場内で製造しています。さらなる省エネルギーおよびGHG排出量削減に向けて、設備の更新やボイラーなどの燃料転換、再生可能エネルギーなどのグリーンエネルギー調達を進めていきます。

各工場の省エネルギー・GHG排出量削減対策

網干工場 2012年9月よりガスタービンによるコジェネレーション設備を稼働
2019年6月より余剰電力の販売実施
大竹工場 2007年8月より余剰電力の販売実施
2016年7月、ボイラー増設。石炭・廃タイヤチップの混焼ボイラー2基を並列運転
新井工場 2017年1月、石炭ボイラーからガスタービンによるコジェネレーション設備に変更

廃タイヤの燃料使用による化石燃料の削減

日本では年間およそ1億本、重量にしておよそ100万トンもの廃タイヤが発生し、環境に多大な負荷を与えています。一方で、廃タイヤは天然ゴムなどのバイオマスを30%程度含有する、優れた燃料として再利用が可能です。こうした点に着目し、大竹工場では石炭と廃タイヤチップを混焼させるサーマルリサイクルを実施しています。廃タイヤチップを混ぜることで、化石燃料の使用量とCO2排出量を共に削減できることから、発電設備を製造する協力会社などと連携し、廃タイヤチップ混焼率の向上、安全かつ適切に発電できる技術開発に取り組み、一定の成果を上げています。

また、当社事業場における廃棄物発生量の約61%を占める、ばいじんや燃えがらなどはセメントや路盤改良材へ利用し、廃プラスチックは分別回収するなど、リサイクルに取り組んでいます。

ボイラー燃料となる廃タイヤチップの品質管理強化に取り組み、2025年度は、廃タイヤチップ混焼率63%、化石燃料使用率36%を達成しました。今後も持続可能な社会の実現に向け、リサイクルのさらなる強化を図っていきます。

大竹工場 化石燃料(石炭)使用率の推移
縦軸はパーセント、横軸は年度。2007年度は93%、2008年度は89%、2009年度は84%、2010年度は74%、2011年度は71%、2012年度は69%、2013年度は63%、2014年度と2015年度は58%、2016年度は65%、2017年度は60%、2018年度は58%、2019年度は56%、2020年度は52%、2021年度は51%、2022年度は48%、2023年度は42%、2024年度は43%、2025年度は36%。

太陽光発電による購入電力量の削減

当社グループ生産拠点への太陽光発電システムの導入など、再生可能エネルギーの活用も進めております。2025年度はDaicel Safety Systems (Jiangsu) Co.,Ltd. 、Daicel Safety Systems India Pvt. Ltd.、Daicel Safety Systems Europe Sp. z o. o.、Daicel Safety Systems (Thailand) Co., Ltd. およびDaicel Chiral Technologies (India) Pvt. Ltd.に設置した太陽光発電システムによる自家発電量は2,441MWhでした。

再エネ導入計画

当社は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、富士工場で再生可能エネルギーの導入を開始します。2026年度から、同工場の年間電力需要の約10%相当についてバーチャルPPA※を活用し、CO₂排出量を年間約5,000トン削減する見込みです。2030年に向けて再生可能エネルギー導入を段階的に拡大し、環境負荷低減と企業価値向上を推進します。

  • ※
    発電事業者から再生可能エネルギー由来の環境価値(証書)を長期契約で購入する仕組み